米国怪談 太陽の怪物 「評価 C」
ロスアンゼルスの放射能研究所にて、ギルバート・マッケンナ博士は実験中に事故に遭い、被曝した。直ちに病院に運び込まれて検査が行われたものの、どこも異常が見当たらず、彼は数日で退院の許可が出された。ところが日光浴のために病院の屋上に連れて行かれたところ、彼の肉体は突然変貌し、醜悪な姿のウロコ人間になってしまったではないか。放射能がギルバートにもたらした変異、それは日光を浴びると怪物に変貌するという、実に厄介なものだったのだ。幸いにもしばらく日光を浴びなければ元の姿に戻ったので、妻アンや同僚のマケル博士、そして放射能被害の治療に携わるホフマン博士は、ギルバートを家の中で過ごさせ、何か彼を治療する手立ては無いか考えることにした。しかしギルバートに生じていた変化は、肉体のみに留まらなかった。彼の内面には強い獣性をもつ別の人格が誕生しており、人格が交代するとギルバートは夜間に家を抜け出し、酒場で歌い手の女性を引っ掛けるようになったのである。そしてある日、いつものように外に抜け出したギルバートは、チンピラとのトラブルの果てに日光を浴びてしまい怪物化。チンピラを惨殺し、指名手配されることとなった。ギルバートは逃走し、石油採掘所に潜伏するも、すぐに発見され、警官隊に包囲される。怪物化したギルバートは石油タンクの階段を上りながら、警官たち相手に最後の抵抗を試みるが…。
62年に大蔵映画の"世界怪談集"の一本として、「沖縄怪談逆吊り幽霊・支那怪談死棺破り」と同時上映されたSF怪奇映画。月で変身する狼男へのアンチテーゼなのか、太陽で変身する本作のギルバートは、全身にウロコをまとった爬虫類的なビジュアルをしている。このおぞましいデザインは素晴らしいの一言だが、ギルバートは何か爬虫類らしい特性を発揮するわけでもなく、することと言ったら陸上を徘徊して人々を襲うだけ。人格の方も獣そのものといった感じで狼男と大差なく、外見以外の差別化をまるで窺い知れなかったのは少々厳しかった。
ストーリーはまんま「ジキル博士とハイド氏」なのだが、舞台を現代にしていることや、妻や友人たちの視点からギルバートの変貌を悲劇的に描写していることから、どちらかと言うと東宝の変身人間シリーズに近いノリが感じられた。「ガス人間第一号」などが好きならば、きっと嵌まれることだろう。
余談だが、本作における最大の残虐シーンは、怪物化したギルバートが石を持って犬を撲殺する場面だ。これは犬好きならば涙を流すこと請け合いである。
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