グリズリー2010         「評価 C」
とある日の夕方、サムは両親の真珠婚式を祝うため、妻リズ、久方ぶりに再会した弟のニック、その恋人クリスティーンと一緒に、両親の待つステーキハウスへと車を走らせていた。だがその途中、近道をしようと未舗装の道に入ったのがまずかった。慣れないオフロードを走ったため、タイヤがパンクしてしまったのだ。サムたちは直ちにタイヤ交換に取り掛かったものの、終わった頃にはすっかり日は暮れ、森は深い闇に覆われていた。急いでステーキハウスに向かわなければ。発車しようとしたサムたちの前に、一匹のグリズリーが現れた。グリズリーはゆっくりと彼らに接近してきたので、サムはたまらず射殺する。これで難を逃れたかに思われたが、グリズリーはすぐ近くにもう一匹いた。しかもこいつは仲間の死体を目の当たりにして激昂し、一目散にサムたちへ襲い掛かってきたのだ。一匹目のグリズリーを始末するのに弾を使ったため、最早サムたちに対抗する手段は無い。たちまち車を破壊され、逃走手段を絶たれてしまった。そこで彼らは、ひとまず車内に篭城し、危険が去るのを待つことに。しかしその中で、サムとリズ、そしてニックの、ドロドロな人間関係が浮き彫りになっていったのだ…。
車を走らせる4人の男女、幹線を外れて裏道を行く、一匹のグリズリーを殺したらもう一匹に襲われる、二匹目の熊に車を横転させられる、グリズリーを車に閉じ込めようとして失敗する──と、前半部分の内容が「グリズリー・レイジ」と丸っきり被っている動物パニック映画。グリズリーに本物を使っており、人間と直接絡むカットが無いので襲撃シーンの面白みに欠けるのも「グリズリー・レイジ」と一緒なものだから、観ていて強烈な既視体験に襲われてしまった。だがこの映画、サムたちの昼メロばりの人間関係が明るみになる辺りから、「グリズリー・レイジ」とは全く別の路線へと進んでいく。リズの暴露が発端となってサムたちがせめぎ合い、終いには主役のグリズリーそっちのけで取っ組み合いの喧嘩を始めるのだから、動物パニックとは別方面での面白さを発揮していたのである。
また本作、エンドロールの背景では、本物のグリズリーが廃車と戯れている映像が延々と映し出される。わざわざこんな映像を流したことについての、製作側の真の意図は量りかねた。だがこの朗らかとした映像のおかげで、人間ドラマの殺伐とした雰囲気が拭い去られ、作品の後味がだいぶ良くなっていたのは確かだった。
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