トロメオ&ジュリエット          「評価 A」
数十年前、モンティとキャプは、トロマヴィル高校を卒業後、最低映画専門の映画会社を設立した。ところがやがて、キャプが映画会社の全ての権利を掌握し、モンティを追放。それ以来マンハッタンでは、モンティを当主とするキュー家と、キャプを当主とするキャピュレット家が、絶えず激しい抗争を繰り広げるようになったのだ。そして現代、モンティの息子トロメオは、エロゲーをやりながら自慰に耽る日々を送る、典型的な駄目青年だった。だがある日、ほんの気まぐれでキャピュレット家のパーティーに来てみたら、キャピュレット家の令嬢ジュリエットに一目惚れ。ジュリエットの方も婚約者がいる身でありながらトロメオに惹かれ、2人は身分の壁を越えて密かに愛し合うようになったのである。しかしキャプがそれを面白く思うはずがなく、彼はジュリエットをトロメオから引き離すと、かねてより結婚を予定していた精肉店の御曹司と強引に挙式させようとした。ジュリエットはそんな自分の家柄を呪った。そこで結婚式当日、アヘン窟で貰った怪しい薬を飲み、巨大な肉棒を生やした悪魔の毒豚ガールに変身。婚約者を幻滅させ、結婚式をお釈迦にすることに成功した。当然キャプは怒り狂い、ジュリエットを折檻しようとしたが、そこにトロメオが駆けつけた。彼は愛のキスによってジュリエットを元の姿に戻すと、幸せな未来のため、キャプに戦いを挑むのだった…。
男女の悲しい恋物語をベタベタな演出と下品なギャグ満載でお届けする、トロマ版のロミオとジュリエット。ロイド・カウフマン&マイケル・ハーツの主導によって製作されている純然たるトロマ映画であり、ダンスパーティーの場面では毒々モンスターやカブキマンがゲスト出演しているなど、ファンサービスにも余念の無い内容だった。しかし本作、「ドーン・オブ・ザ・デッド」「スリザー」のジェームズ・ガンのデビュー作ということもあってか、お馴染みの残虐プレイが一段とキレ味を増していたのである。二つのチンピラ組織の抗争という筋書きのため、作中では登場人物たちが次々と惨たらしい方法で死んでいく。この映画においては、指切断や眼球串刺しなんて全然ぬるい方だ。車にひかれて腕がもげたかと思えば、次の瞬間には首まで飛んで、幸せそうにドライブしている家族の車のボンネットに生首が転がり落ちる──みたいな絢爛豪華な殺害シーンがバンバン出てきて、しかもそのどれもがトロマ流の愉快痛快奇々怪々なユーモアで味付けされているものだから、観ているとゲロ爽やかな奇妙な感覚に襲われるのだ。本作はそんな殺害場面以外にも、凶悪な巨大チンポコモンスターが登場する場面や、ジュリエットの腹が破裂してポップコーンやネズミや蛆虫が飛び出す悪夢の場面、悪魔の毒豚ガールの醜悪すぎる造形や、フリークスだらけの狂気のエンディングなど、おげっと来る名場面が目白押し。トロマのグロテスクな要素に抵抗が無い人ならば、まず間違いなく楽しめることだろう。
それにしても、こんな傑作トロマ映画がDVDでリリースされるとは、本当にいい時代になったものである。
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