悪夢の死霊軍団 バージン・ゾンビ 「評価 D」
クリスチーナは、親族の集まるモンセラー館へと向かっていた。彼女の父は大富豪であり、だいぶ前に遺産分配にかかわる遺言状を残して亡くなった。だがその遺言状は、父の後妻ヘルメニアが息を引き取った次の日に、開封されることになっていた。そして今にもヘルメニアが亡くなりそうな状態ということで、親族は緊急の招集をかけられたのである。途中、小さなホテルに泊まったクリスチーナは、ホテルの使用人たちから、モンセラー館は入った人間が発狂する恐ろしい場所だと告げられる。更にその晩、彼女は無数の死霊に追い回される悪夢にうなされた。このような不吉な出来事に見舞われながらも、クリスチーナは夜が明けると屋敷に赴き、親族たちと共にヘルメニアの最期を看取った。ところがヘルメニアは死の間際、クリスチーナに「逃げるのよ」と囁いたのだ。するとその後から、彼女の周囲では奇怪な事件が次々と発生した。ベッドにコウモリの死骸が散りばめられていたり、亡き父の幽霊から「死の呪いが迫っている」と警告されたり、先日の悪夢に再びうなされたり──。遺言状が開封され、父の遺産が全てクリスチーナに渡されることが発覚すると、怪奇現象はより強烈に、彼女の身に降りかかるようになった。果たしてこれらの現象は、財産を横取りしようという何者かの仕業なのだろうか。憔悴するクリスチーナに対し、親族たちが本性を剥き出しにして襲い掛かってきた。とその瞬間、彼女の見た悪夢が現実世界への侵蝕を開始。夢と現実、過去と未来が何度も何度も入り乱れる中で、クリスチーナはいつ終わるとも知れない無間地獄に陥るのだった…。
死の呪いにかけられた少女が遭遇する恐怖を観念的に描写した、ジェス・フランコ監督によるホラー映画。筋の通ったストーリー展開よりも悪夢的なイメージを形成することに腐心したような内容で、特に映画後半になると、ストーリーは完全に破綻。ゾンビの大群に追われるクリスチーナ、松明を持った黒衣の女、親族に見送られながらの入水、といった陰惨な映像が、夢にうなされるクリスチーナの姿と共に何度と無くループされるという、文字通りの無間地獄状態に突入していた。しかしこの映画、肝心の恐怖映像が稚拙な出来のせいで、地獄のようなイメージをまるで象れていなかったのが辛かった。特に本作のゾンビは大して腐敗しているわけでもないのに歯だけが欠けていて、物凄く間抜けな感じが漂っている。もっと鮮烈でイマジネーションを刺激してくれるような映像が立て続けに現れてくれれば、少女が辿る無間地獄に浸ることもできたというのに、本作のような有様では、ジェス・フランコの意図しない意味での無間地獄を味わうしかなかったのである。
TOP PAGE