ドリラー              「評価 C」
1985年に作られた本作、なんとマイケル・ジャクソンの「スリラー」をパロディにしたポルノ映画だ。まさかヒットした映画のみならず、ミュージック・クリップまでパロディにしてしまうとは。全くもって、パロディAV業界の守備範囲の広さには驚愕させられるばかりである。
「この映画は超自然的である広がりをもつ不可視な世界の存在を描き出すものである」なんてテロップで本作は幕を開ける。とある夜、街角のライブハウスでは、黒人スーパースター"ドリラー”のコンサートが行われていた。歌って踊る彼のパフォーマンスに、観客たちはみんな興奮のるつぼ。中には欲情してハダカになる女性まで出る始末で、コンサートは大盛況のうちに終了した。そんな中、彼氏と一緒にライブを見に来ていた美少女ルイーズは、家に帰る途中、軟弱でヘナヘナな彼氏の姿に愛想を尽かしてしまう。ああ、もしドリラーのような逞しい男性が彼氏だったら。そう思いながら、ルイーズは部屋に戻り、ベッドで眠りについた。しかしその時、突如家の外が光りだした。そしてボロ布をまとった女性たちがゾロゾロと窓から侵入し、ルイーズの部屋で「スリラー」っぽい曲に合わせてゾンビダンスを始めたのだ。目を覚ましたルイーズは、部屋で繰り広げられていた異様な光景に茫然となる。しかも女性たちの中から、憧れのドリラーが出現したではないか。ドリラーは踊りながら、ルイーズのベッドへと接近。そのままベッドに上がりこみ、愛撫を始めようとしたところ、彼は急に苦しみだす。やがてドリラーの全身から黒い体毛が伸び、尻尾が生え、大きい瞳がチャーミングな獣人へと姿を変えたのだ。獣人ドリラーは獣らしい長くて黒いペニスを出すと、それでルイーズをレイプした。憧れのドリラーに犯され、ルイーズはすっかり幸せの絶頂に上り詰めた。一戦を終えた後、ドリラーはルイーズのことを気に入り、彼女を抱えて自分の城へと連れて行った。そこではドリラーの部下のせむし男やゾンビ、ボンテージ男優が、ドリラーの連れてきた女性たちを淫靡に調教していたのだ。彼らに調教され、ルイーズはまたもや幸せの中へ。やがて他の女性たちと共に乱交パーティーに発展し、その様子をドリラーとバックダンサーたちは、踊りながら鑑賞していた。ところがふと気づくと、ルイーズは自分のベッドで寝ていた。今のは全て夢だったのか。ルイーズがしょげ返っていると、ドアのチャイムが鳴った。そしてドアを開けると、そこにはドリラーが! 「コンサートの帰りに車が故障したから、ちょっと家の中に入ってもいいかな?」とドリラー。かくしてこの日はルイーズにとって、最高の一日となったのである…。
パロディAVにはごく僅かな要素しかオリジナルと似せていないようなパロディ未満の作品が数多くある中で、本作はしっかり「スリラー」をパロディにしており、マイケル好きにはたまらない内容だった。本作のドリラーは、声こそマイケルに似ていないが、マイケルそっくりのメイクや衣装を施されており、ダンスもちゃんと踊れている。ライブ会場にルイーズの部屋に城の地下室と、所構わずバックダンサーを連れて踊りまくる姿は「ムーンウォーカー」に通じるシュールさがあった(と言ってもこの映画、「ムーンウォーカー」の3年前に作られているのだが)。本作はこうしたメインの部分がしっかりしているからこそ、ルイーズの家やドリラーの城が80年代のコンピュータで描かれた下手な一枚絵で表現されていたり、ドリラーの射精が同じく安っぽさ全開なコンピュータで描かれた画像で処理されていたり、ゾンビが顔以外は全然メイクされておらず胴体が妙に血色がよかったり──といった駄目駄目な部分を存分に笑い飛ばすことができたのである。ただマイケルの少年好きが知られていなかった頃の作品なので、単純に美女をレイプするだけのドリラーの姿には少なからず違和感を覚えてしまった。
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