アニマル・セックス 「評価 B」
40億年前に地球上に出現し、以後無数に増殖していった生命体たち。彼らは皆、生殖活動、すなわちセックスを行うことで子孫を作り、種を守り抜いてきた。この映画は、地球上に存在する様々な生命体がセックスし、子供を産み育てる様子を紹介・解説したドキュメンタリー映画である。
オープニング映像として、エキゾチックな音楽に合わせて七面鳥がセックスする様子を流した後は、地球上の生命体の進化過程に沿って様々な生命体のセックスが紹介される。まずは水中に暮らす単細胞生物たちのセックス(というより分裂)に始まり、海綿動物、サンゴ、ミミズ、そしてナメクジやタコといった軟体動物のセックスを紹介して、原始生命体のグループは終了する。お次は節足動物たちの紹介で、蜘蛛やカブトガニ、蝶々、蛾、トンボ、ウニのセックス映像が流される。それが終わるといよいよ脊椎動物の紹介になり、まずはサケやヤゴ、タツノオトシゴや、熱帯魚といった魚類のセックスから。次はカエル、亀、トカゲ、ワニ、ヘビという爬虫類のセックス映像。そして雷鳥、孔雀、グンカンドリ、アホウドリ、カイツブリ、白鳥、ニワトリなどの鳥類のセックスが紹介された後は、いよいよお待ちかねの哺乳類のセックスに突入だ。カンガルーのセックスに緒を発し、ウサギ、ネズミ、ビーバー、モルモット、ヤギ、クマ、豹、トラ、ライオン、オオカミ、レッサーパンダ、豚、キリン、サイ、シマウマ、クジラ、馬、ゾウ、そして最後に霊長類のサルたちのセックス映像を流して映画は終わる。
本作は動物学者たちが監修している、極めてまじめな内容だ。そのため動物同士がズコズコ行為に及んでいる光景のみならず、その後の産卵や子育てについても同時に紹介しており、動物のセックス目当てで見ると少々ガッカリさせられる。しかしこの映画、記録映像の合間合間に、様々な動物の性行動や子育てについての豆知識がナレーションとして語られており、それが異様に面白かった。以下、本作で語られていた豆知識の中から、とりわけ興味を引いたものを抜粋。
・タコのオスは足の一本を使って射精をし、残り七本の足でメスを愛撫する。
・蜘蛛のオスはメスより小さい。よってメスの腹が減らないうちにセックスを済ませないとオスはメスに食べられる。
・毒蜘蛛の場合、オスはメスに噛まれたら一巻の終わりなので、前の二本足でメスの毒牙を押さえた状態でセックスする。
・亀のメスは一度セックスをすると、体内に何年もオスの精子を溜め込むことができる。
・ワニのセックスは15分で完了する。
・トカゲのペニスは勃起していない時、体内に収まっている。
・親鳥は卵を温めるために自分の羽毛まで抜いてしまう。
・アデレードペンギンのオスは、メスに小石を持っていって、石をメスに気に入ってもらえたらセックスできる。
・雷鳥のオスは一度の発情期に何十羽ものメスと交尾する。
・殆どの鳥はペニスがないので、肛門から射精する。
・しかしカイツブリや白鳥は立派なペニスを持っており、泳ぎながらセックスする。
・ニワトリのオスは絶倫で、一日に二十回から五十回もセックスする。
・カンガルーのメスの膣には二つの入り口があるので、オスのペニスは二又になっている。
・ウサギのメスは次から次へと男を変えないと我慢できず、また乱交でないと燃えない。
・クマのオスは発情期に相手がいないと、マスターベーションをしたり野菜をレイプしたりする。
・スカンクや熊のペニスには骨がついている。
・豚のセックスは30秒で完了する。
・クジラ捕りの間ではザトウクジラのメスは海の娼婦と呼ばれており、オスが近づいてきたらすぐに相手を受け容れてセックスする。
・ザトウクジラは母乳が大量に出る。赤ちゃんクジラがちょっと口を乳首から離すと、こぼれた母乳が何十メートル四方に亘って海を白く染める。
以上のような日常を生きていく上ではこれっぽっちも役に立たない知識が満載で、たとえ産卵や子育ての映像が流れている間でも物凄く楽しむことができたのである。ただ本作、モンド映画最盛期の73年に日本で公開されたためか、日本語のナレーションがやたらと扇情的で、不真面目ムードが漂っていたのが気になった。カリフォルニア州パシフィックグローブでは蝶に危害を加えたら罰金が出るという話で「日本にはそんな法律はありませんが、いいですかみなさん、くれぐれも、夜の蝶だけには気をつけましょうねえ」とコメントを付けたり、亀のオスがメスのお尻に頭を突っ込んで求愛行動をしている場面で「どう? 僕の亀の頭は立派だろう? と言っているかどうかは知りませんが」なんて言ったりする程度ならまだしも、ゾウの発情期について説明する際に「動物園ではゾウの発情期が来るごとに飼育係が1人殺されるくらいですからねえ」と愉快そうに話していたのは流石にどうかと思った。動物たちのセックス風景と性行動の豆知識だけで十分満足できたのに、それに余計なコメントを付けているせいで面白さが些か削がれていた作品だ。
(それにしても、こんな映画が日本で劇場公開されていたのだなあ…)
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