ウェイトレス 桃色究極メニュー      「評価 B」
夢を求めてニューヨークにやって来た田舎娘たちが生活費を稼ぐために就く職業といったら、まず出てくるのがウェイトレス。ここジェリーが店長を務めるレストランにも、様々な事情でウェイトレスとして働くことになった女性たちがいた。
まず、ジェリーの恋人であるアンドレアは女優志望。レストランで働きながらオーディションを受ける毎日だったが、高い自尊心から来る大役志向のために、なかなか役者の仕事にありつくことができずにいた。そんな彼女はある日、イカれたロシア人コックが作った特別料理"人間フランベ”を見て、「まるで火刑台のジャンヌ・ダルクだわ……そうよ、ジャンヌ・ダルクよ!」と、自分の理想とする役がジャンヌ・ダルクであることに気づいた。そこで早速アンドレアは、ジャンヌ・ダルクの演劇を製作予定のプロデューサー、ベルマンのもとに行き、自分をジャンヌ・ダルク役にして欲しいと懇願した。しかしベルマンは、既にジャンヌ役は決まっていたので彼女を門前払いしたのである。それでも諦めきれないアンドレアは、ジャンヌ・ダルクのような全身鎧を着込み、ピエロに扮したジェリーと共にベルマンに猛烈アタックを繰り返した。会食中のレストランに乱入し、彼の部屋のテレビをジャックして「ジャンヌ役をアンドレアにしろとの小学生たちのデモがありました」と偽のニュースを流し、鏡台の裏に隠れては髭剃りの手伝いをし──。その彼女のバイタリティーに押し負けたベルマンは、奥さんに薦められたこともあり、彼女がオーディションを受けることを許可したのだった。だがアンドレアが嬉々としてオーディションに臨もうとしたところ、いつまで経っても彼女の番が回ってこない。ベルマンは本当は、オーディションをする気なんて無かったのだ。そうと知ったアンドレアは流石にゲンナリし、女優の道を諦めてウェイトレスとして生きる道を選ぼうとした。ところがベルマン夫人に説得され、再びジャンヌ・ダルクになりたい気持ちが込み上げてくるアンドレア。彼女はジェリーやベルマン夫人と協力し、ベルマンに彼女の演技を見てもらう作戦を打ち立てた。ベルマン夫妻と投資家たちが夜道を歩いているところに強盗に扮したジェリーが現れ、それをジャンヌに扮したアンドレアがやり込める、という筋書きだ。しかしいざ実行する段になって、そこに本物の強盗が紛れ込んでしまった。
次のウェイトレス、ジェニファーは記者志望。自分の作品をニューヨークの雑誌社に認められ、晴れて憧れの記者として働けるようになったのだが、与えられた最初の仕事は「先月号に掲載された『独身男を引っ掛ける方法』を実践し、本当に効果があるか検証する記事を作ること」だった。内気な田舎娘のジェニファーはナンパはおろか、男性とまともに付き合ったことすらなかった。それでも記者の第一歩でつまづくわけにはいかないので、彼女はウェイトレスとして働く傍ら、記事に載っていた様々な方法でナンパに挑戦してみることにした。もちろん最初から上手くいくはずがなく、朝のジョギングでナンパした男が周囲の人間の首を絞めまくるアブない性格だったり、コインランドリーでナンパしようとしたら洗剤のCM撮影に巻き込まれたりしたが、やがて医者見習いの素敵な青年ビルをナンパすることに成功し、2人は互いに愛を育む仲にまで進展した。だがある時、ジェニファーが手当たり次第にナンパしていたことがビルにばれ、一方でビルが「どうして双子のヌードモデルなのに貧乳・巨乳の差が出るのか」という研究をしていたのをジェニファーが知ったため、たちまち2人は破局してしまったのだ。失恋から自暴自棄になったジェニファーは、「真夜中のカーボーイ」にかぶれたようなハチャメチャなカウボーイと出会い、彼と愛し合おうとする。だがビルのことを忘れられなかったジェニファーは寸でのところで思い留まり、カウボーイを全裸で縛り付けて放置プレイすると、彼の部屋から逃げ出すのだった。
最後のウェイトレス、リンジーは店のオーナーの一人娘。彼女は根っからの不良で、ある日とうとう私立トロマ学園を退学させられた。それを見かねた父は、彼女を更生させるために自分の経営するレストランで働かせることにしたのだ。しかし接客精神の欠片もないリンジーが上手くウェイトレスをやれるはずもなく、仕事は失敗続き。それどころかイカれたロシア人コックと一緒にウォッカを飲み、毎日のように店で乱痴気騒ぎをする有様だった。そんな中、いつも代金を払わずに帰る迷惑な老婆がいると知ったリンジーは、老婆を強引に店から追い払った。ところがこの老婆はニューヨーク最高のシェフと称されていた名料理人で、常連として来てくれるだけでも店の名誉となるような存在だった。しかもこの頃、店長のジェリーはアンドレアとの仲が上手く行っていないため大きなストレスを抱えていた。その時期にこの失態なものだから、流石のジェリーもブチ切れ、とうとうリンジーに店長の座を押し付け、店を去ってしまったのである。突然店長にさせられたリンジーは、それまでのダルな生活から一転、てんてこ舞いの毎日を送ることに。更に数日後、ロシア人コックがリンジーと喧嘩して店を辞め、料理を出せる人間が誰もいなくなってしまった。この絶大な逆境の中、リンジーは店を再建するために立ち上がった…。

ロイド・カウフマン&マイケル・ハーツの「毒々モンスター」コンビによる、三人のウェイトレスの奮闘を描いたお色気コメディ映画。さすがこのコンビが直接製作に携わっているだけのことはあり、下らなくも勢いのあるギャグがハイテンポで次々と飛び出してくる内容は実に爽快だった。中でも本作は、他の作品のオマージュが多数盛り込まれていたのが印象的。落選続きのアンドレアが町のみんなから「ノー」を突きつけられる場面はモロにエド・ウッドの「グレンかグレンダか」だし、アンドレアとジェリーがローラースケート場で今後のことを語り合う場面は「ロッキー」からの引用。またジェリーとアンドレアが2人っきりで食事をしていたところ、次々と無意味な来客がやってきて部屋が大混乱になるシークエンスはマルクス兄弟の「オペラの夜」からのイタダキだ。エド・ウッドとマルクス兄弟に同じ作品内でオマージュを捧げる人間なんて、全世界でもロイド・カウフマンとマイケル・ハーツの2人ぐらいだろう。他にも本作、ケーキを持ったまま時計を確認しようとしてケーキを床に落とすという古典的コントのようなネタや、アイデアが浮かぶと電球が出てくる演出を実写映画でやってみるという正気を疑うネタ、ジェリーと警官が下らない話題で言い合っている側で心肺蘇生や路上出産が行われているという風刺チックなネタなど、何とも幅広いタイプの笑いが散りばめられており、当時の2人が如何にノッていたかが窺い知ることができた。ただ惜しかったのは、ラストのまとめ方だ。リンジーのレストラン再建話に合わせて全ての問題を片付ければ「同じレストランで働くウェイトレスたちの映画」として綺麗に締めることができたのに、よりによってレストラン再建話を一番最初に終わらせて、それからアンドレアとジェニファーの問題を個別に解決していくものだから、映画全体のまとまりが悪くなっていたように感じられたのだ。
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