バッド・バイオロジー 狂った♂♀(ヤツら)ども 「評価 B」
カメラマンのジェニファーには秘蜜があった。彼女は異常肥大した7つの陰核をもっており、常に性欲はMAX状態なものだから、毎晩のように男を引っ掛けてはベッドインしていたのだ。おまけに一度ヤッたら2時間で妊娠・陣痛・出産してしまう特異体質な上、絶頂すると発作的に相手の男を殺してしまうため、彼女が一戦を終えた部屋にはいつも、奇形の赤ん坊と、男の惨殺体が取り残されていたのである。
ヤク漬けの冴えない青年バッツにも秘蜜があった。彼は生まれた時、医者にへその緒と間違えて陰茎を切断された。すぐに縫合処置がとられたものの、このせいで長年インポテンツに悩まされることとなったのだ。そこで17歳のとき、彼は憧れの勃起を手に入れるため、危険なステロイド剤に手を出した。結果、不能は収まったが、その代わりに逸物は馬以上にデカくなったばかりか、自立した意思まで持ち出したのである。バッツはそれ以来、自分の意思とは無関係に暴れ回る益荒男の存在に、頭を抱える日々を送り続けた。
ある日ジェニファーは仕事として、バッツの家で行われていたエログロ映画の撮影現場の取材にやって来た。そこで彼女は偶然にも、バッツの暴れん棒が猛り狂っている様を目撃する。日ごろのセックスライフに不マンを抱きつつあったジェニファーは、彼こそ自分をマン足させてくれる理想の相手だと確信し、後日嬉々としてバッツの家に乗り込んだ。だがその頃、バッツの珍棒はバッツと喧嘩して彼の体から分離しており、近所の家に忍び込んではグラマー美女たちを手当たり次第にズコズコ犯しまくっていた。そして家に戻ってきた時には、もはや精根尽きてただ春の夜の夢の如しな状態と化していたのだ。それを見たバッツとジェニファーはひどく慌てたものの、バッツの御子息にステロイドを注射することで、見事その機能を回復させた。これで愛の障害は取り払われた。かくして最強最悪なペニスとヴァギナによる性器の一大銀河戦争が、いよいよ幕を開けた…。
奇形モンスター映画界の巨匠フランク・ヘネンロッターが、「バスケットケース3」以来16年ぶりに監督を務めた艶笑映画。前半部分で異常な性器をもつ2人の男女の悲惨な生い立ちをつらつらと説明していたものの、その後は悩める男女の内面に深く突っ込まないまま進行し、最後はヤることヤってお終いで正直拍子抜けさせられた。本作には、「バスケットケース」や「ブレイン・ダメージ」のような過酷な雰囲気が微塵と存在しなかったのである。ヘネンロッターの過去の作品が輝いていたのは、奇形生物たちの視覚的なエグさだけでなく、ストーリーの残酷さがそのおぞましさに拍車をかけていたからだというのに、肝心のストーリー面が浅かったのは本作の大きなマイナス要因となっていた。
とは言えこの映画、ヘネンロッター流の奇形生物描写が久々に大爆発しており、彼が創造するクレイジーワールドを再び拝むことができただけでも非常に満足度の高い内容だった。特に作品の目玉と言えるバッツのペニスは、グネグネ動かすために粘土みたいな材質で作られており、見た目のリアルさに欠けていた点こそ残念だが、ヘルペスのようなイボイボや竿に浮かぶ血管など、男性器のグロテスクな側面を強調したその造形には舌を巻かされた。しかもヘネンロッター作品ではお馴染みの「自立意思をもった身体部分」であるため、ペニス主観のアングルで勝手に動き回るのみならず、壁や床を突き破って女たちに夜這いをかけるシーンまで用意されており、ヘネンロッター監督のイカれ具合にはただただ畏怖の念を抱くばかりだった。他にも本作では、ヴァギナ主観のアングルで肥大したクリトリスを見せ付けるカットや、浴槽の中で泣き叫ぶ奇形児、顔がヴァギナになっている女たちを犯しまくる映画の撮影風景など、殺人的に素晴らしい奇形描写をわんさか拝見することができる。「バスケットケース」の頃の勢いは感じられなかったが、それでもヘネンロッターファンならば観て損はしない作品だった。
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