アフター・インパクト 「評価 B」
地球に巨大彗星が接近。ただちに人類は広島原爆の600倍の威力をもつ爆弾で彗星の軌道を変えようと試みたものの、彗星があまりにも巨大だったために失敗。彗星はそのまま地球に激突した。落下地点であるメキシコのユカタン半島は一瞬にして炎に包まれ、周囲数千キロの都市が強い衝撃波によって消失する。大西洋沿岸の都市は津波に飲み込まれて壊滅。世界中の大気の温度は急激に上昇し、空からは灼熱の岩が降り注ぎ、たちまちにして地上の7割の生命体が死に絶えてしまった。空が無数の塵に覆い尽くされたために植物は光合成ができなくなり、生態系は完全に崩壊。光合成なしで生きていける菌類が繁栄を極めたかと思えば、氷河期が訪れて地表は氷に覆われたため、菌類は僅かのうちに死滅する。その他にも、酸性雨、火山噴火、嵐など、様々な災害が彗星衝突の影響で発生する。果たしてこのような状況下になっても、地球は再生することができるのだろうか…。
彗星落下後の地球の様子を、様々な分野の専門家の意見を基にシミュレーションした映画。まず目を引くのはパニック映画顔負けの災害描写の数々で、彗星落下を始めとする様々な災害が美麗なVFXで描かれており、そのスケール感溢れる映像はパニック映画好きには嬉しい限りだった。また本作、専門家たちの考証も一風変わっていた。彗星落下によって生じる災害内容について物理学者や地質学者や生物学者に論じさせるだけでは飽き足らず、その後の世界ではどのようなタイプの人間が生き延びるかとか、人々はどう団結したら上手くやっていけるかといったことを、人類学者や社会学者に論じさせ、言わば理系と文系の両方の側面から「災害後の世界」を映し出していたのである。そのため本作では、テレビのサイエンス番組では滅多に見られない「人の世界が変わりゆく様」を見ることができ、大きな特徴となっていた。ただ一方で、作中で展開するシミュレーションドラマは人物描写が希薄で、内容がどちらかと言うと理系寄りになっていたのは残念なところ。折角文系サイドからの考証も多数紹介されているのに、作中のドラマに活かされているのが「他のコミュニティーとの交流の仕方」といったマクロな分野の話ぐらいだったのは、どうにも勿体無いように感じられた。
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