感染都市           「評価 C」
2008年、ベトナムのハノイにて鳥インフルエンザの変種ウイルスが発見される。「ハノイ・ウイルス」と名づけられたそれは瞬く間に世界中に感染拡大し、ドイツにおいても多数の感染者が確認された。それなのに予防薬レジフルの供給が間に合わないため、たちまちドイツ国中はパニックに陥る。マスコミのデマに惑わされる人々。レジフル倉庫を占拠する男。レジフルを横流しする政治家に憤り、暴徒と化す市民たち。暴動のとばっちりで放火されるベトナム人の店。そして、こんな状況に追い討ちをかけるかのように登場する、レジフル耐性をもつ新種のハノイ・ウイルス。果たしてこの騒動に、終止符が打たれる日は来るのであろうか…。
2005年に猛威を振るった鳥インフルエンザ。もしこれが一段と致死性と感染力の強いウイルスに変貌したら──という仮定に基づくシミュレーションを辿った、擬似ドキュメンタリー映画。日を追うごとに感染者が増えていくのに従い、人々の心が荒み、そして凶行に走るまでの過程が非常に生々しく描写されており、見ごたえのある内容だった。ただ映画の結論として提示されるのが、「このような事態になったら政府はワクチンの開発に全力で取り組まなければならない」という、個人ではどうしようもないレベルの話だったのは如何なものか。せっかく長いシミュレーションで多くの一般市民たちの姿を追ってきたのだから、例えば「困難に直面してもお互いを尊重しあわなければならない」のような、普遍的な落とし所にした方が収まりがいいように感じられた。
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