滅亡の黙示録 「評価 D」
イランで地下核実験が実施されたことで国際的緊張が高まる中、世界各地では大規模な異変が生じた。巨大地震が頻発し、太陽からの放射能により倒れる人が続出し、甚大な死傷者が出たのである。一方、アメリカの国立地球物理データセンターのマーティン博士は、地球の自転速度が次第に遅くなっていることを観測する。世界各地の異常災害は、全て自転速度の低下に起因するものだったのだ。しかし、何故自転速度が遅くなったのか。軍の要請でそれを調べることになったマーティンは、軍の人間と共に、長い間仲違いをしていた変わり者の学者・デビッドのもとを訪れた。前々からこの事態を察知していたデビッドは、彼らに自らの推測を述べる。それによると、イランの核実験が行われた地点がたまたま地軸に直接影響を及ぼすポイントであったため、このような異変が起こったらしい。更に彼は「この異変を止める方法は存在しないので、後は滅亡を待つしかない」と、あまりにも残酷な事実を打ち明けた。そこで終末の時を大切な人々と過ごすため、マーティンたちは家族のいる町へと移動することにした。しかしその途中でデータセンターに立ち寄ってみると、地球の自転速度が元に戻りつつあるとの観測結果が出ていた。人間が小賢しい対策をせずとも、大いなる地球は自らの力で修復を遂げたのである。ところがそんな中、イランの核所有を認めない米軍上層部が大統領を説得したことにより、イランへ核攻撃が行われることが決定してしまう。もし同じポイントで核爆発が生じたら、折角収まりつつあった地球の異変が更に悪化するかもしれない。そこでマーティンたちは、何とか核攻撃を止めさせるべく奔走した…。
「首狩り農場 地獄の大豊作」「ビキニ航空」のフレッド・オーレン・レイ監督による、世界終末パニック映画。地球の自転速度低下による災害を描いているという点では、2008年に製作された方の「2012」と共通しているが、たとえオカルト的な方法であろうと事態解決のために人々が行動していた「2012」とは違い、本作の登場人物たちは核攻撃をやめさせる以外には本当に何もしていない。ただ災害が起こった原因を調査する(といってもデータを基に推測するだけなのだが)だけで上映時間は刻々と過ぎていき、「解決方法はいつになったら提示されるんだ!?」と観ている側がやきもきしていると、映画の2/3ほどが過ぎたところで「解決方法なんてないよ」と言われてずっこける。その後、呆然とする観客を差し置いて、登場人物たちは滅亡の瞬間を穏やかに迎えるべく行動を開始する。そこで「ああ、『ノウイング』みたいな終末を受け容れる終わり方になるのか」と思っていると、ラスト15分ぐらいになって「自転速度が戻っています」と言われ、再びずっこける。そして米軍のイラン攻撃を止めさせる段階になると、最早脱力の極限にまで達しており、ストーリーの行く末なんて完全にどうでもよく感じられてしまうのだ。また本作の科学者たちは「憶測を断定的に述べるわけにはいかない」という立派な信念をもっており、そのおかげで「待て、それは推測に過ぎない」とか「駄目だ。これでは推測を語ることになる」といった感じで会話が何度も遮られ、観客のイライラ感を見事に倍加させてくれた。地震の特撮シーンも今一つな出来だったし、とても評価することのできない作品だった。
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