201X 「評価 C」
アルプスのフェント村で、救助隊の一員として活躍していた若き医師・マルク。彼はある日、愛する女性アンナの弟ミヒャエルを救助することに失敗し、ミヒャエルを死なせてしまう。マルクはアンナに強く責められて自信を失い、独り寂しく村を去った。それから9年後、彼はパリで義肢を作る会社を経営していた。だがふとテレビを見ると、9年前に崖下に落ちたミヒャエルの氷漬けの死体が発見されたとのニュースが。未だ過去を断ち切れずにいた彼は、このニュースを切っ掛けに、久々にフェント村に戻ってみることにした。村は9年前と何も変わらない様子で、かつての同僚たちは彼の帰郷を心より歓迎する。しかしアンナだけは、弟を失った矢先に姿を消したマルクのことを許しておらず、彼に冷たく接するのだった。また彼女にはニコという幼い息子がいたが、マルクに対し、その父親が誰なのか明かそうとはしなかった。そんなギスギスした雰囲気の中、村では最大のイベント・スキー大会が開催される。日ごろの温暖な気候に加えて積雪量も多く、絶好の雪崩日和であるにもかかわらず、市長が救助隊の警告を無視して強行開催したのだ。そして表彰式の最中、案の定雪崩が発生。村は大量の雪に飲み込まれた上に交通網を遮断され、最悪の事態に陥ったのである…。
「ファングス」「ネクロポリス」のイョルク・リュードルフ監督による雪崩映画。「主人公側の警告を無視して村祭りを開催したところ、災害が起こって大パニック」というパニック映画のテンプレートを何のヒネリもなく使用している上、マルクを責めるアンナの行動が八つ当たり以外の何物でもないので主人公たちにいまいち感情移入できず、雪崩が起きるまでの前半部分はあまり楽しむことができなかった。ところがこの映画、雪崩が発生してからの展開が実にスピーディー極まりなく、その目まぐるしさが別の意味での楽しさを生み出していたのだ。雪崩によってマルクとアンナが車の中に閉じ込められ、酸素がもつかどうかのタイムサスペンスに持ち込むのかと思いきや、2人は映画中盤で割とアッサリ救出される。そして2人は和解し、抱き合っていたところ、それを見ていたニコがショックを受けて避難所を飛び出し、崩れた建物の下敷きになる。これでニコの救出がクライマックスになるのかと思いきや、ニコは救出シーンが一切描かれず、アンナによってアッサリ助け出されて避難所のベッドに運び込まれる。足を負傷したニコを手術するには医療器具が必要だ、という話になり、それを手に入れるのがクライマックスになるのかと思いきや、マルクはすぐさま埋もれた病院内を探索し、そしてアッサリ医療器具を見つけ出し、次のシーンでは手術が始まっている──といった感じで、映画の山場にできるトラブルを即座に解決することで幾つもの山場を数珠繋ぎに盛り込んでいたのだ。この恐ろしいまでのせわしなさは、観る者に一種のトリップ感覚を味わわせてくれ、散漫な内容に昂揚的楽しさを見出させていたのである。ただこのハイペース仕様のため、脇役たちが次から次へとバタバタ死んでいき、後味が物凄く悪くなっていたのは何とかして欲しかった。
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