アウトブレイクX        「評価 C」
エリンはジャストライト製糖会社に勤めるキャリアウーマン。職場では自らの能力を存分に発揮しているものの、この頃は、妻を失ったことで酒とタバコに溺れるようになった父親と、消息を絶って半年近く経つ弟の安否が気がかりになっていた。そんなある日、彼女は「シンデレラ」と名乗る人物から数通の社内メールを受け取った。それには会社が廃棄工場に対して多額の研究資金を融資している資料と、何処かで監禁されているらしい弟を撮影した写真が。エリンは弟が廃棄工場にいるのではないかと考え、父親と共に工場に乗り込むことにした。そして無事潜入を果たした彼女らは、会社の幹部サイクスと出会う。「シンデレラ」の正体である彼は2人に対し、ジャストライト製糖会社の恐るべき陰謀を明かす。会社のオーナーであるブレイリンは業界を独占するため、開発チームにカフェイン以上の中毒性をもつ新しい砂糖を作るように命じた。そこで研究者たちは、拉致した浮浪者や麻薬中毒者を使って非合法の実験を行い、ブレイリンの要望どおりの砂糖を完成させた。ところがこの砂糖には、摂取した者を醜悪な食人鬼に変えてしまうという、隠された性質があった。にもかかわらずブレイリンは目先の利益を優先するあまり、悪魔の砂糖を大量生産し、全米各地で売り出そうとしていたのである。それを知ったエリンたちは、実験体として拉致されていた弟を救出した後、サイクスと協力して工場を爆破しようとする。しかし工場内にはクリーチャー化した実験体たちの他、顧客に商品の説明をしていたブレイリン、国防省の要請により工場を制圧しに来た傭兵部隊、更にブレイリンに雇われていた傭兵隊長までが居合わせており、状況は混迷の一途を辿るのだった…。
砂糖の副作用が原因でオンボロ工場がバイオハザード状態に陥る、バイオレンスホラー映画。作品後半では主人公や傭兵たちと食人鬼の決死の戦いが展開されるのだが、その戦闘内容が完全に人間側のワンサイドゲームだったのが気になった。何せ戦闘シーンの殆どが、「物陰から実験体が出現→銃撃→実験体死亡」の僅か5秒ほどのスピーディーな流れで処理されており、人間が実験体の接近を許す描写が極端に少なかったのである。あまりにも簡単に実験体たちがバタバタ倒されていくので、「殺される側の人間がたくさん出てきているのだから、もっと食人鬼たちに活躍の機会を与えても…」と思えてしょうがなかった。しかもこの戦闘と平行して、エリンたちとブレイリンとの戦い、ブレイリンと傭兵部隊の戦い、傭兵部隊と傭兵隊長との戦い、といった人間同士のバトルが立て続けになされ、おまけにこちらの戦いの方が食人鬼とのバトルより明らかに描写に重きが置かれている始末。「シンデレラ」の正体についての伏線や、「巨大生物の島」を彷彿とさせるラストなど、ストーリー上では目を見張る箇所が結構あっただけに、メインのはずの実験体たちの扱いの不憫さに悲しい気持ちになってくる作品だった。
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