186 感染大陸           「評価 C」
新型コレラの蔓延により地球の人口が激減してから、十数年後。かつて大都市だったサンフランシスコも、今となっては186名しか生存しておらず、住民たちは互いに寄り添い協力し合いながら細々と暮らしていた。そんな中、かつてこの集落を追放された男・マークが帰ってきた。彼はかつて消防士として、率先して人々の命を救っていたのだが、コレラによる大量死に直面して発狂。サンフランシスコの家を次々と燃やし、危険人物として追い立てられていたのだ。今となっては彼もすっかり正気に戻っていたようだが、町の人々にとって彼の存在は不安要素でしかなかった。そのため数日後、住民の何者かがマークを惨殺した。一方その頃、町の若者たちは集落の外の森林地帯を散策していた。生存者たちの体験談を聞きながら、彼らは今の状況に適応することの大切さを知る。しかしやがて、彼らは他の集落の領域に足を踏み入れてしまったらしく、何者かによる銃撃を受けてしまった…。
文明が崩壊した世界で細々と生きる人々の姿を、擬似ドキュメンタリー方式で描いた映画。今の世界の様子を後世に残すために2人の生存者が撮影した、という設定で映画は展開されるため、本作には全体的な筋書きというものが存在しない。現在の状況や発生した事件についての記録映像が淡々と連ねられるという、非常に特異な構成になっていたのだ。本作のこの構成に対するこだわり具合は凄まじく、コレラによる人々の死滅や、マークの殺害、外の人間との銃撃戦といった事件現場そのものは、設定上個人で撮影するのが難しいため、滅多に映像として出てこない。代わりにその件について誰がどう思っているか、というインタビュー映像が作品の大半を占めており、住民たちの語り口を通して、災害を受け入れた彼らが未来に対して前向きな考えをもっていることをまざまざと見せ付けているのである。インタビューばかり続くので退屈な内容ではあるのだが、「渚にて」や「ナイト・オブ・ザ・コメット」のような滅亡しかけていても前向きであり続ける人々の姿が好きな人間としては、強く心に残る作品だった。
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