PANDEMIC 感染惑星 「評価 D」
シアトルの町で、ウイルス性の病気によって倒れる人が続出した。世界保健機構のマーティン博士が調査に赴いたものの、患者たちの症状は、結核のようでありペストのようでもあり、どうにも病因を特定することができない。ただ1つ判明したのは、患者たちの血液中に金属のような物質が紛れ込んでいたことだった。そんな彼女のもとに、ある時ジャーナリストのジャックという男が現れる。彼の話によれば、この病気はシアトルに本社を構える化学企業・ケラー社が起こしたものらしい。ケラー社は軍と密約を結び、航空機に新型の燃料を使わせるようにした。ところがこの燃料には有毒物質が含まれており、航空機が通過した地域の住民たちを未知の病気に感染させていたのだ。これを知ったマーティンはケラー社にワクチンがあるのではと考え、ジャックと共にケラー社に向かった…。
「感染列島」に肖ってこんな邦題になっているものの、実際はシアトルのみを舞台にしたマイクロスケールのウイルスパニック映画──と言うか航空機が通過するのはシアトルだけのはずがないので、邦題のように地球規模で同様の被害が起こっていなければおかしいのだが、その点については作中で全く触れられていない。本作ではこのように、本来ならば気にしなければならないであろう事象が数多く見落とされており、観ている間は腑に落ちない感覚に悶絶させられっ放しだった。特に納得のいかなかったのが、ジャックがケラー社に潜入する場面だ。彼が社屋に入り、ワクチンの置かれている部屋に辿りつくまでの間、監視カメラや、電子ロック付きの扉といった、セキュリティの類は一切出てこない。ただ警備員に見つからないようにして廊下を進むだけで、実に簡単に目的の部屋まで到達してしまうのだ。国家規模の陰謀に加担している大企業とは到底思えないザル警備で、リアリティなんて欠片も感じられなかった。その一方で地元の医師の感染が発覚した場面では叙情的なバラードが流れて無理矢理感動させようとする辺り、なんだか日本の駄目なSFパニック大作と凄く似た空気をもつ作品だった。
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