アルマゲドン2009          「評価 C」
アラスカに落ちた、彗星の欠片。それは衝突による被害で25万人の犠牲者を出したばかりでなく、地球の地軸までずらしていた。たちまち地球全体の磁場が狂いだし、世界各地では異常気象や大地震が頻繁に発生するように。更に天体学者のジェームズ博士が被害予測をした結果、このまま何の対策もしなかったら地球を覆う磁界が消失し、太陽光線が直接地上に届くようになって人類が滅亡してしまうことが判明した。ジェームズはこの最悪の結末を防ぐため、彗星落下地点から見た地球の反対側で、天体衝突と同じ威力の核爆発を起こし、地軸を元に戻すという案をひねり出す。米軍の協力を得て、核爆弾を積んだ戦闘機を発進させたとこまでは良かったが、磁界の乱れで生じた強力な電磁波によって戦闘機が大爆発を起こし、作戦は失敗に終わってしまった。上空に電磁波が発生するような状況では、飛行機を使った作戦は行えない。そこで次なる案として出されたのが、マリアナ海溝の奥底で核弾頭を爆破させ、地盤に強烈な衝撃を与えることで地軸を元に戻すというものだった。ただ、最新鋭の潜水艦では電磁波の影響で操縦不能に陥る可能性があったので、米軍はロシアから旧式のディーゼルエンジンを搭載した潜水艦を借り、いよいよ作戦を実行に移した…。
「ソーラー・ストライク」「ストーム・ゴッド」のポール・ジラー監督による、彗星衝突に伴う地球規模の災害を描いたTVムービー。本作は災害の発端が天体衝突ということで「アルマゲドン2009」という邦題になったのだろうが、最終的に事態を解決する方法は地殻に核弾頭を打ち込むという「ディープ・コア」チックなもの。つい最近「ディープ・コア2010」がリリースされて「ディープ・コア〜」という邦題シリーズが復活したのだから、プライムウェーブの担当の人も本作の邦題を「アルマゲドン2009」にするか「ディープ・コア2009」にするかで相当悩んだんだろうなあ……と、かなりどうでもいいことを考えてしまった。
そんな本作は、起点の災害となる彗星衝突よりも、磁場の異変によって生じる電磁波がメインとして扱われている、かなり珍しいタイプのパニック映画だ。地球各地で強力な電磁波が円状に発生し、作動中の一切の電子機器をショートさせる。これだけでも地球の文明を崩壊させる恐ろしい災害なのだが、ショートした電子機器のそばに人間がいると、電子機器から飛び出してきた電磁波を直撃し、命を落とすという二次災害付き。どういう原理でそうなるのかは作中で全く説明されないので良く分からないものの、いずれにせよ相当に恐ろしい災害であることには変わりない。さて、この被害に遭わないようにするには、電磁波の接近を音で感じ取ったらすぐに身の回りの電子機器を停止させればいいらしい。ジェームズ博士はこの対策方法を知っており、事前に家族に知らせている他、作品後半、自身の乗った車と核弾頭を積んだ軍用トラックの二台で港まで移動していた際、電磁波の接近を察知してすかさず車を止め、被害を未然に防いだ。ところがこのジェームズ博士ときたら、電磁波の危険性を十分知っているくせに、後ろの軍用トラックの運転手たちに対策方法を知らせていなかった。案の定、運転手たちは即死し、トラックはショート。地球滅亡まで時間が無いというのに、ジェームズ博士たちはトラックを修理しなければならない羽目に陥るのだ。「事前に知らせてあげようよ!」と誰もが突っ込みたくなる珍場面である。
このような突っ込み所こそ多々あれど、本作は電磁波の恐ろしさに関しては良く描けており、滅亡ムードを盛り上げていたのは評価できた。ただ一方、もう1つの主要な二次災害として登場する地震の描写は感心できなかった。地震による災害シーンが都合2回盛り込まれているが、いずれの場面も道路が割れて車が落ちて──という全く同じシチュエーションだったのに加え、2つ目の地震については、映画冒頭でその前後のやり取りを予め観客に見せておくという要らないサービスつき。このように冒頭のシーンで映画中盤に起きる災害を先取りして見せるという手法は、「エイリアン・ゼロ」など幾つかの映画で使われているが、この手法が映画を鑑賞する上でプラスに作用することは滅多にないと断言できる。その時点で誰が生き残るのか、これからどういう災害が起きるのか、といったことが前もって観客の頭にインプットされてしまうため、映画の展開に対する求心性を大きく削ぎ落とすからである。VFXも美麗とは言いがたく、これなら電磁波による災害にのみ注力すればよかったのではないか、と感じられてしまった。
余談だが、本作のクライマックスにおいて、アメリカの潜水艦では電子機器がショートするため、ロシアの潜水艦を借りるという展開になったのには軽い感動を覚えた。だいたい多くのパニック映画は、たとえ地球規模の災害であっても自分の国だけで解決しようとする傾向が強すぎる。本作のアメリカのような柔軟な外交姿勢を見習って欲しいところだ。
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