バグズ・パニック!         「評価 C」
医学生のカーラは、家を売る相談をするため、13年ぶりに故郷のマジョルカ島に帰ってきた。長く疎遠だった父と再会し、気まずい雰囲気の中で用件を伝える彼女。しかしその矢先、父が急に意識を失って倒れ、病院に搬送された。検査により、ミツバチに刺されたことによるアナフィラキシー・ショックだと診断されたが、カーラはどうも腑に落ちない。父は蜂の毒に対するアレルギー体質ではなかったし、通常のアナフィラキシー・ショックならば刺されて数分で発生するはずなのに、父の場合は刺されてから30分以上経過してからの発症だったからだ。そこでカーラは蜂に詳しいタクシー運転手のベンと協力し、独自に父が倒れた原因を探った結果、1つの真実にたどり着く。島で蜂の研究を行っていたアルバレス博士が、ニューギニアの凶暴な蜂とマジョルカのミツバチを交配させて、全く新しい殺人蜂を誕生させていた。その蜂の一部が研究所から逃げ出し、カーラの父に襲い掛かったのである。おまけに新種の蜂による被害は留まるところを知らず、島のあちこちで蜂が人間を襲い、穏やかな島はパニックに陥った。そこでカーラとベンは父や島の人々を救うため、アルバレスの研究所へと潜入した…。
「ハチが地球上から消滅すると、人類は4年後に滅亡する」というアインシュタインの言葉を冒頭で引用し、作中でも近年問題化しているミツバチの激減を話題に盛り込み、終末ムードを高めているが、一方でストーリーは科学者が作った新種のハチが人々を襲う──と70年代から全く変わっていない旧態依然としたもので、ある意味安心させてくれるドイツ映画。黒いボートが転覆していると思いきや、実は表面に蜂がびっしり張り付いていた、という最初のシーンを始め、蜂の大群が襲撃する場面一つ一つに工夫が凝らしてあったのが印象深い。防護服を着たカーラたちが蜂の大群に占拠された廃屋を調べる場面では、「防護服が破ける→隙間から一匹の蜂が→群れから離れた場所で防護服を脱ぐ→すかさず蜂たちが突っ込んでくる」と、単体から集団へと段階を踏んだ襲撃が描かれている。ビーチで遊ぶ海水浴客たちが蜂軍団に襲撃される場面では、蜂の大群に襲われる人間の様子がシルエットを使って描かれ、効果的かどうかはともかくとしてインパクトを強めている。しかしこのような襲撃場面の工夫に対し、退治場面の描かれ方が凡庸そのものだったのはいただけなかった。ただでさえ退治シーンまでの流れが「血清を運ぶ途中で偶然女王蜂の巣を発見したから、ついでに退治しちゃおう」といった感じで盛り上がりに乏しいのに、それに加えて退治方法も極めてありふれたもので、観ていてまるで爽快感が沸いてこないのだ。また本作、蜂の事件を通じて失われていた親子の絆を取り戻す──というドラマが話の主軸になっているものの、カーラと父親が疎遠になるまでの過程が中盤で少し語られるだけで明らかに説明不足で、ラストの和解が活きてこないのも残念だった。
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