黙示録2009 急襲強酸雨     「評価 C」
ジェニーたち三人の大学生は、休日をエンジョイするためにミッション州立公園へとキャンプに出掛けた。そこでテントを張る場所を探していたところ、彼女たちは山の中に籠って何やら実験をしているらしい男と出会う。男の名はジャック・ウェストン。彼女たちが通うスタンフォード大学を最年少で卒業した天才で、現在は木々の成分から癌の薬を作るための研究をしているとのことだった。彼に興味を抱いたジェニーたちは、彼のテントのすぐ側に泊まることにした。初めはジェニーたちを遠ざけていたジャックも次第に打ち解け、親睦を深めるようになった。ところが翌朝、事態は急変する。川の水で顔を洗ったジェニーの恋人ケビンが、突如として苦しみだした。ジェニーたちが見たところ、彼の顔はひどい火傷を負ったかのように水膨れだらけになっていた。実は先日、すぐ近くの金属精錬工場で爆発事故が発生し、大量の二酸化硫黄が大気中にばらまかれた。その影響は川の水に及び、綺麗だった水は危険な硫酸へと変わっていたのである。更に硫黄を含んだ雲からは硫酸の雨が降り注ぎ、ジャックたちは絶体絶命の状況に。硫酸から身を守りつつ、彼らはケビンを救うため、40km離れた病院へと移動を開始した…。
割とメジャーな災害であるにもかかわらず、滅多にパニック映画の題材として取り上げられることのない“酸性雨”。だが「インアマゾン」のロン・オリバー監督が手掛けた本作では、そんな酸性雨の恐ろしさが存分に描かれており、酸性雨が十分にパニック映画の題材に成り得ることが示されていた。本作の酸性雨は特異な条件で生じたものである故に、通常の酸性雨よりも極めて凶悪な被害をもたらす。テントが、東屋が、車が、硫酸の雨によって次々と溶かされていく。せっかく身を隠す場所を見つけても、その場所が雨に溶かされ、やむを得ず次の安全地帯を求めて移動する──という簡単には安心感を与えない展開が、まさに酸性雨ならではのスリリングな面白みを感じさせてくれたのだ。また酸性雨から身を守るための策も、単に屋根のある場所に隠れるだけでなく、酸化の遅い木々の下を移動する、体や車に石灰を塗りたくって酸性雨の被害を中和する、といったものが提示され、展開に広がりを持たせていたのも見逃せない。ストーリーの方は凡庸で求心性に乏しかったものの、酸性雨というマイナージャンルでパニック映画の醍醐味を堪能できただけでも大きな収穫のある映画だった。
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