マキシマム・ボルケーノ      「評価 B」
1883年、インドネシアのクラカトア島で発生した火山噴火は、3万6千人もの犠牲者を出す大惨事となった。本作はこの災害を、当時の現地の人々の証言や記録を基に、1つの物語として再構成したセミドキュメンタリー映画である。
とは言えこの映画、VFXを駆使した災害場面は見ごたえのあるものが多く、パニック映画として見ても楽しめる内容だった。特に噴火の影響で津波が押し寄せる場面では、海岸線が地平線近くまで退いたかと思えば物凄い勢いで津波となって押し返してくるまでが最小限のカット割りで表現されており、そのスケール感満ちた描写には舌を巻くばかりだ。また本作では、フィクションのパニック映画で頻繁に使われる火山弾やマグマによる災害は全くと言っていいほど描かれていない。その代わりに出てくるのが、先述の津波の他、火山灰の重さで船が沈没しそうになったり、高熱のガスが周辺の島を襲ったりといった副次的な災害だ。どちらもパニック映画ではあまりお目にかかれないが、十分すぎるほどに恐ろしい災害であり、この点でも見ごたえのある作品だった。
ただし本作はセミドキュメンタリー映画であるため、ストーリー面に期待をしてはいけない。本作ではクラカトアを研究している火山学者、オランダ開拓地の管理者とその部下の現地人、そして火山見物に来た白人たちを運送していた船長の4人にスポットを当て、彼らがどのような形で火山噴火に遭遇したかが綴られている。しかしそれぞれの人物のストーリーは「どんな立場の誰々がこんな目に遭った」以上の展開を見せず、随分と淡々とした印象だ。壮絶な災害描写はパニック映画顔負けなのに、ストーリーはセミドキュメンタリーの枠を出ていない。そのギャップによって、妙な感覚に陥ってしまう映画だ。
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