マザーズデー           「評価 B」
大学時代の仲良し三人組、トリナ、アビー、ジャッキーは、大学を卒業してからも年に一度キャンプに出掛け、旧交を深め合っていた。そして今年も、彼女たちはニュージャージー州の湖畔へとキャンプに出掛けた。だがそのすぐ近くには、女をレイプして惨殺する極悪兄弟と、彼らに歪んだ愛を注ぐ年老いた母親が暮らしていたのだ。極悪兄弟は焚き火を囲んでいる彼女たちを見つけるや否や、強引に捕まえて家へと連れ帰った。全身を拘束され、母の日のプレゼントとして母親の前に突き出される三人。母と兄弟は彼女らの中から、ジャッキーを今夜の遊び相手として選び出すと、トリナとアビーを家の一室へと閉じ込めた。夜が明け、何とか部屋を脱出したトリナとアビーは、一家の目をかいくぐってジャッキーを救出する。しかし全身ズタボロにされていたジャッキーは、トリナたちと山の中を逃げ回っているうちに力尽きて死亡してしまった。理不尽な不幸に、嘆き憤る二人。彼女らは残されていたキャンプ道具で全身武装すると、狂人一家に対する反撃を開始した…。
ここしばらくの間、「悪魔のゾンビ天国」「悪魔の毒々おばあちゃん」「悪魔の毒々プラトーン」「死神ランボー 皆殺しの戦場」など、トロマの非メジャー系(つまり「毒々モンスター」「毒々ハイスクール」シリーズにカウントされない)ホラー映画が相次いでDVDリリースされている。おかげで本作のような未見のトロマ映画も気軽にレンタルで観賞できるようになり、トロマファンにとっては嬉しい限りだ。
本作は狂人一家にレイプされた女性が復讐をする、「悪魔のいけにえ」と「発情アニマル」をミックスしたようなテイストのホラー映画だ。前半部分ではパーティーの余興として女性たちが屈辱を味わわされていく様が何とも陰惨に描かれおり、これからの復讐への期待を否が応にも盛り上げてくれる。ところがいざ兄弟への反撃が始まると、爽快感に欠ける演出が気にかかってくる。兄弟の1人目を殺す場面は、首にアンテナを刺し、股間に斧を叩きつけるところまでは良かったが、最後のトドメが布を口に押し込んで窒息死という地味な手口でガッカリさせられる。2人目を殺す場面は、パイプ洗浄液を飲まされ、テレビを頭に被せられた上に顔面メッタ刺し──と手口自体は派手なのだが、テレビが明らかに中身の無い作り物で迫力が半減しているし、トドメの顔面メッタ刺しも、刺される側の様子は一切画面に映らないので欲求不満がたまってしょうがなかった。しかし本作、そんなモヤモヤした状態で突入する母親との戦いで、それまでの不満を一気に吹き飛ばしてくれた。日ごろ病気の実母の介護でストレスをため続けていたアビーが、同じく病床の身であるババアに対し日ごろの恨みをぶつける様子からは、これまで以上のカタルシスが感じられたのだ。トロマらしいやる気のない演出が随所に見られる一方で、きっちり締めるべき個所では締めている。意外な佳作と呼べる映画だった。
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