バイオクリーチャー・ライジング  「評価 D」
選挙を間近に控えるクリズウェル議員に、深刻なトラブルが発生した。選挙スタッフのウェンディに誘惑された彼は、妻子を持つ身でありながら彼女と一夜の関係を持った。ところがその後、ウェンディは忽然と姿を消したばかりか、彼との情事を撮影したビデオを武器に、彼を脅迫してきたのである。そこで困ったクリズウェルは、あらゆるトラブルを解決する裏組織“ディヴィジョン8”に、スキャンダルの揉み消しを依頼した。直ちにビデオを回収すべく動き出す、ディヴィジョン8の面々。だがその一方、この事件を嗅ぎつけたテロ組織“プレイグ”もまた、クリズウェルを陥れるべくビデオの確保に動き出した。選挙戦の裏で幾度として衝突する、二つの闇組織。そんな中、プレイグはディヴィジョン8を殲滅せんとするため、優良な遺伝子を合成させて開発したバイオクリーチャー軍団を実戦に投入した。凶暴なバイオクリーチャーたちに苦しめられながらも、ディヴィジョン8の面々は決死の反撃を試みる…。
一本のビデオテープを巡る二大組織の抗争を描いた、非メジャー系のSFバイオレンス映画。銃撃戦に拷問にセックスと、実に分かり易い娯楽的要素を満載している作品だが、観ていてどうもスカッとしない。と言うのも本作、魅力的な登場人物がまるでいないのだ。議員は選挙に勝つためなら妻子も殺す卑劣漢だし、ディヴィジョン8の連中は目的遂行のためならどんな悪事も辞さない。そしてプレイグはテロリストの集まり──と、登場人物の誰もが悪党という構図であるにもかかわらず、どいつもこいつもやることがセコい小悪党ばかり。バイオレンス映画において、チンピラ同士の小競り合いほど見ていてつまらないものはないぞ。
また邦題になっているバイオクリーチャーたちも同様に、映画全体が低予算なこともあってか物凄く稚拙なCGで描写されている上、「こいつらは大量破壊兵器の概念を変える!」という触れ込みの割には、ディヴィジョン8の攻撃によって簡単にバタバタと倒されていき、モンスターとしての魅力がまるで感じられなかった(あらかじめ「こいつを倒すには専用のショットガンが必要」と説明していたのに、ショットガン以外の武器でアッサリ倒せているのはちょっと…)。
しかしそんな面白みに欠ける本作にも、1つだけ見所がある。それは主演俳優たちのキャスティングだ。本作は極めて低予算であるにもかかわらず、「鮮血の美学」のデヴィッド・ヘス、「マニアック」のキャロライン・マンロー、そして「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 死霊創世記」のトニー・トッドといった、絶妙にマニアックなホラー映画の主演俳優たちに加え、みんな大好きトム・サヴィーニまで出演しているのだ。こんな製作者の趣味が色濃く反映されたキャスティングができるのも、まさにインディーズならではと言えるだろう。
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