HAKAIJYU 破壊獣         「評価 C」
エリンは新しい生活の場を求めて旅をしている最中、山合いの田舎町に立ち寄った。そこで彼女はラクエルという女性と知り合い、「ジャクソン・フィルム」と呼ばれるビデオテープを渡された。このテープに収められているのは、ラクエルの母親が巨大な猿人に襲われて死亡するまでの一部始終。あまりにも常識外れな内容だが、この衝撃映像は多くの人間の興味を引き、町の名物の1つになっているらしい。テープを受け取ったエリンは、町を後にして、木々の生い茂る山道を車で走らせた。だがその時、彼女の車は逃走中の強盗団が運転する車と衝突してしまう。強盗団は警察の追っ手を逃れるため、エリンを人質にとり、森の中へと逃げ込んだ。この森が「ジャクソン・フィルム」の撮影された場所のすぐ近くだとも知らずに…。
「クラーケンフィールド HAKAISHIN」「クローンフィールド HAKAISHI」「ダイナソーフィールド SATSURIKUSHA」などなど、ここしばらくリリースされ続けている「クローバーフィールド HAKAISHA」っぽい邦題の作品群。これらの殆どは通常のモンスター映画と大差ない内容で、邦題以外はこれっぽっちも「クローバーフィールド」っぽさを感じさせない作品ばかりなのだが、その中でも本作は比較的「クローバーフィールド」に近いものが見受けられた。と言うのも本作、映像も脚本も完全な劇映画として作られているにもかかわらず、その両方の側面において、似非ドキュメンタリー映画の影響が強く見え隠れしていたのだ。
例えば映像面では、人間同士のストーリーが展開している間は平凡な映像表現なのに、いざ猿人が登場する場面になると、突然カメラが手ブレを起こしたり、逆光で画面が見えなくなったり、猿人を遠くから定点撮影したりと、いかにもビデオカメラで撮影したかのような映像に切り替わる。そして脚本においても、森の中を行く登場人物たちが、足跡や血のり、長い体毛など、猿人の存在をほのめかす痕跡を少しずつ見つけていく──といった探検ドキュメンタリーチックな展開が用意されていた。基本的には劇映画なのに、要所要所で実録モノっぽさが浮かび上がる。常時実録タッチなのか一部だけ実録タッチなのかの違いこそあれ、「似非ドキュメンタリー映画の手法を明らかなフィクション映画に取れ入れている」という点において、本作は「クローバーフィールド」と非常に似た性質を持っていたのである。
しかし本作、こういった手法を用いている以上、もう少し登場人物たちの会話内容に気を遣ってほしかった。折角映像と展開においてノンフィクションらしさが漂っているにもかかわらず、登場人物たちの会話は抽象的な例え話や遠回しな表現が多く、フィクションとしての色合いが強烈に濃い。そのせいでドキュメンタリータッチな要素との齟齬が生じており、観ていてどうしても違和感が拭えなかった。
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