悪霊のしたたり 「評価 C」
エリーたち6人の若者グループは、カヌーを楽しむために辺鄙な田舎町オールドマインズを訪れた。ところがこの町、とんだ危険地帯だった。閉鎖的な考えをもつ町長ホーヴィスの意向によって、町を訪れた余所者は町長の息子デューイによってことごとく殺されていたのだ。今回も町長は余所者を抹殺すべく、彼らがキャンプをしている森にデューイをけしかけた。命令通りにグループの一人を惨殺するデューイ。しかし彼はその際、排除の対象ではない町の住民までも勢い余って殺してしまった。それを知ったホーヴィスは激しく怒り、デューイに厳しい罰を与えた。すると彼は逆上し、町長を始め、住民たちをも次々と殺し始めたではないか。町中で次々と死体が積み重なっていく中、エリーたちは何とか町から逃げだそうとするが…。
インディーズ系超低品質ホラー映画「悪魔のえじき2」「悪霊のいけにえ」のスタッフによる、覆面殺人鬼スプラッター映画。「悪魔のえじき2」や「悪霊のいけにえ」で頻繁に見られた「必要以上の長回しによる尺稼ぎ」は本作も健在で、エリーたちが無言でカヌーを漕いでいる様子が延々と2分近く流される、バラバラ死体を1分近く舐めるように映す、などのダラダラしたシーンのせいで作品のテンポが著しく悪くなっており、鑑賞の意欲を見事なまでに減衰させてくれた。他にも登場人物たちの会話がまるで噛み合っていなかったり、「なぜそうするのか」が全く説明されないで登場人物たちが勝手に動き回ったりと、観る者を戸惑わせる要素にも満ち満ちており、やはり作品の質は決して高くはなかった。
だが本作、「悪魔のえじき2」や「悪霊のいけにえ」なんかと比べると、遥かに映画としての出来は良くなっていた。先述の長回しも前の二作ほどには多用されていないし、話の腰を折るようなエロシーンも皆無。そして特殊メイクの質もかなりの向上が見られ、映画後半の凄惨描写乱れ撃ちが非常に見栄えのするものになっていた。殺人鬼の性格付けについても、「悪霊のいけにえ」では長台詞で説明されていたのに対し、本作では父親の虐待や母親から人形を渡される様子など、ちゃんと説得力のある画で語られていた。また本作のデューイは凶器を用いず、頭を左右から掴んで縦に引き裂いたり、目に指を入れて潰したり、腹に手を入れて内臓を掴みだしたり、しこたま殴ったりと、己の怪力のみを武器として殺害を行っており、凡百の殺人鬼との差別化が図られていたのも素晴らしいところ。スタッフの確実な成長が窺え、次回作が楽しみになってくる映画だった。
(それにしてもJVDよ、どうして字幕のついてないスタッフインタビューをDVDの映像特典に入れたんだ)
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