忍者          「評価 C」
甲賀忍者の虎大介らは、伊賀忍者の菊地博士を抹殺し、彼が開発した新しいワクチンの入った箱を盗み出した。甲賀忍者を陰で操っている悪人ブライアンはそのワクチンから強力なウイルスを作り出し、全世界にばら撒こうとしていたのだ。目論見通りに箱を入手したブライアンだったが、箱は超合金で作られており、簡単には開けることが出来なかった。菊池博士の記憶を調べた結果、箱を開けることが出来るのは、菊地博士とコピーという名の青年だけだということを知った甲賀忍者たちは、コピーを捕まえるべく動き出した。一方、菊池博士の弟子だったくの一・響もまた、ワクチンが悪用されることを恐れ、コピーを抹殺しようとする。ミュージシャンを目指して平凡な生活を送っていたコピーだったが、突然伊賀忍者と甲賀忍者の襲撃を受け、香港の街を逃げ惑う羽目になってしまった。しかしそこへ、元忍者たちが集う霧隠村の忍者・小霊が現れ、コピーを助け出した。霧隠村はワクチンの悪用を望んでいないが、かといってコピーが殺されるのも善しと思っていなかったのだ。小霊によって霧隠村に連れてこられたコピーは、小霊や祖父の芭蕉と共に一時の平穏な暮らしを送っていた。しかし村祭の日、芭蕉がワクチンを奪回しようとブライアンらの居城に侵入したため、コピーの居所が甲賀忍者の知るところとなってしまった…。
「八仙飯店之人肉饅頭」のハーマン・ヤオ監督によるニンジャ映画。「少林寺vs忍者」といい「忍者vs阿羅漢 遥かなる王道」といい、香港産のニンジャ映画は欧米産のそれと違ってリアル路線が貫かれており、過度に無茶な描写が出てこないのが特徴だ。本作でも豊富なワイヤーアクションこそあれど、一応その路線が踏襲されており、本作のニンジャたちが用いる術は殆どが現実に則したものになっている。定番の手裏剣・弓矢・吹き矢はもちろんのこと、壁を蹴ってジャンプすることで撒き菱をかわしたり、水遁の術で敵地に忍び込んだり、自分そっくりに変装した男を用意して相手を混乱させたりと、地に足のついた忍術描写の数々は見ていて実に心浮き立つものがあった。中には、水蜘蛛を履いて水上を歩く、凧に乗って上空から敵地に潜入する、といった現実には不可能な忍術も見られたが、これらも数十年前の忍者映画では当たり前のように拝むことができた光景なので、リアリティにおいてはギリギリセーフといったところで、それほど違和感は覚えなかった。またクライマックスの虎大介との戦いでは、相手の動揺を誘って攻撃するという、如何にも任務遂行を最優先にする忍者らしい姑息な手段が使われており、この点も忍者好きにはたまらない。
しかし本作、惜しいことに脚本の出来が決定的に悪かった。コピーが軽い性格のヘタレ青年から唐突に頭の回転の速い正義漢に変貌するのを始め、登場人物が考えの掴めない人間ばかりでいまいち感情移入できないのだ。忍者アクションは素晴らしい出来だけに、本当に惜しい作品である。
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