デス・レース        「評価 A」
西暦2012年。孤島の私設刑務所ターミナル・アイランドでは、囚人たちによる自動車競走「デスレース」が行われていた。これは車に備え付けた兵器でライバルの車を蹴散らしながらゴールを目指すという狂気のレースだ。刑務所はこのレースを衛星生中継することで利益を獲得し、囚人たちは「5回レースに優勝したら自由の身になれる」という条件でデスレースに参加していた。ところが或るレースのゴール寸前で、デスレースの花形だったフランケンシュタイン選手が、ライバルのマシンガン・ジョー選手の攻撃にあって死亡してしまった。もしこの事実が世間に発覚したら、レースの人気が落ちて刑務所の利益も減ってしまう。そこで所長は、ちょうどその頃刑務所にやってきた元レーサーの囚人エイムズに目を付けた。彼をフランケンシュタイン選手としてレースに出すことで、フランケンの死を世間に隠そうとしたのだ。事情を聞かされたエイムズは初めは嫌がったものの、「自由の身になったら娘に会える」と所長に言われ、この血で血を洗う殺人レースに身を投じることとなった…。
ポール・バーテルのカルト映画「デスレース2000年」を、「モータル・コンバット」のポール・W.S.アンダーソン監督が21世紀にリメイクしたバイオレンス・カーアクション映画。リメイクとは言え主人公たちの名前を除けばオリジナル版とはほぼ別物になっており、例えばデスレースの内容1つとっても、大陸横断しながら一般市民を虐殺して得点を稼ぐというオリジナル版とは異なり、コース上のポイントを通過することで武器や妨害アイテムを使用可能になり、それを駆使してライバル車と戦うといった「マリオカート」風のルールに様変わりしている。特にオリジナル版の最大の特徴である「老人や子供を殺して高得点ゲット」なんてアンモラル極まりないクレイジーなルールが無くなったと知った時は、ケレン味の薄い凡庸なアクション映画になってしまうのではと心配でしょうがなかった。
だが実際に本作を観て、そのような不安は瞬く間に吹き飛んでしまった。確かに反道徳的要素は薄くなったが、その代わりに車に備え付けられた武装がバリエーションに富んでバトルが面白くなっていたり、レース参加者たちの死に様がオリジナル版より惨たらしくなっていたりと、本作ではバイオレンスアクションとしての側面が格段に強化され、失われたはずのケレン味が見事なまでに補われていたのである。これは無駄な要素を一切排除し、デスレースの描写に話の大半を割いた脚本だからこそ為せた技であり、この点は美女の熱烈歓待や反政府団体の暗躍など、様々なストーリー上不必要な要素がカルトらしい異様な空気を醸し出していたオリジナル版の脚本とは好対照に感じられた。オリジナル版に勝るとも劣らない興奮を味わえる、良質なリメイク作品だ。
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