ヴァンパイア・バット 死蝙蝠の町  「評価 B」
夏も真っ盛りの頃。川沿いの田舎町メルシエでは、鹿や人間が相次いで殺されるという事件が発生した。行動生物学の教授であるリアドンが死体を調べたところ、小さな噛み傷やコウモリの糞が発見されたので、事件は吸血コウモリの仕業ではないかと考えられた。その数日後、町では大量の吸血コウモリが現れて大惨事となり、教授の推理が正しかったことが証明される。そこでリアドンは町長の認可の下、動物管理局のシュスターらと共に大規模な掃討作戦を行うことになった。しかし一方で、リアドンの義理の姉シェリーは、町長のポルカーが廃棄物処理会社の人間と密談している現場を目撃していた…。
平和な田舎町が突然変異した吸血コウモリの大群に襲撃されるパニック映画。本作は基本的なコンセプトこそ凡百の生物パニック映画のそれを踏襲しているが、細かいディティールの部分が定番を覆したものになっていた。例えばパーティー会場にコウモリが襲撃する場面。パーティーだの祭りだのに突然変異生物が押しかけて惨劇を巻き起こす──というのは生物パニック映画における定番の見せ場であり、本作もそれに倣っている。だが大抵の映画で繰り広げられる、「パーティーを中止しないと大変なことになる」と主張する主人公側と「パーティーは町のためになるから中止するわけにはいかない」と主張する権力者側との対立要素が、本作には一切存在しない。作中で主人公たちは何の危機意識も持たずにパーティーに参加している上、そのパーティー自体が唐突に行われるものだから、コウモリの襲撃に対して純粋に驚きを味わうことができるのだ。他にも散々悪役であるかのような演出を施されていた人物が実は善人であったり、逆に明らかに協力者ポジションにいる人間が悪役であったりと、パニック映画を知っていれば知っているほど展開の意外性に驚かされる本作。パニック映画好きならば是非観ておくべき作品だ。
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