凶悪海域 シャーク・スウォーム    「評価 D」
アメリカ西海岸の静かな漁村では、大企業の手の者が大量のリンを密かに海中へと投下していた。この企業は漁村を買収して観光リゾートを開発しようと企んでおり、漁師たちが家を手放すよう、周辺の海域で魚を取れなくしていたのである。ところが魚は取れなくなったものの、狂った生態系は思わぬ災難を呼び寄せた。近海に棲んでいたサメたちが餌を失ったことから、群れをなして沿岸部の人間を狙うようになったのだ。その異変に気付いた漁師とその兄弟である大学教授は、サメが村に危機をもたらすことを住民達に警告する。しかしその警告は企業によって揉み消され、漁師たちはサメの大群から住民を守るため、孤軍奮闘することとなった…。
二代目妖怪巨大女ことダリル・ハンナが漁師の元妻役で主演しているTVムービー。元々前後編仕立ての映画なために上映時間は2時間半を越えるのだが、基本的なストーリーは鮫映画のテンプレートに忠実に従ったありきたりなもの。長い上映時間で定番通りの話を見せられても観客が退屈してしまうので、工夫を凝らす必要があった。そこで本作では、海水浴をしていた人々が鮫に襲われるシークエンスを何度も何度も挿入し、定期的に見せ場を作っていたのである。これ自体はよくある手法だし、ドラマパートと同時進行でサメの恐怖を見せ付けられるという利点もある。が、本作は2時間30分以上もあるのだ。そのため犠牲者の数は話が進行するにつれて物凄い量になっていき、「なんで住民たちはこんな大量の犠牲者が出ているのにサメに気付かないんだ?」という疑問が湧いてきてしょうがなかった。やはり定番中の定番なストーリーを2時間半以上の大長編にするのは無理があったようだ。
さて、そんな本作は「スウォーム」の名が表すとおり、無数のサメたちが群れをなして襲い掛かってくるのがウリである。実際海中を埋め尽くすサメの光景は壮観で、クライマックスではさぞや大群の恐怖を見せ付けてくれるだろう、と期待に胸を弾ませた。ところが本作のクライマックスは、サメの大群が何故か三隊に分散して別々の場所を襲い、それぞれを主人公と仲間たちが各個に追い払うというシチュエーションだった。おかげで無数のサメというウリが活きておらず、他のサメ映画と何ら変わらないクライマックスが3回繰り返されるだけという、何とも味気ない感じになっていたのである。
登場人物たちの中に、主人公にどこまでも従順な助手や、金属探知機を使って砂浜の遺失物をネコババしようとする老人など、味わい深いキャラが多く、そのためドラマ部分がそこそこ面白くなっていたのがせめてもの救いだった。
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