ズーマ 恐怖のバチあたり 「評価 C」
フィリピンの砂漠地帯の地中深くに、古代文明のピラミッドが発見された。ところがそのピラミッドには、極悪非道な蛇の魔人ズーマが封印されていたのだ。10万年ぶりに自由の身となったズーマは、早速美しい女性ガレラを洗脳して手下にすると、彼女の手引きによって町の処女たちをレイプし、心臓を奪い取るという凶行に走った。やがて堪りかねたフィリピン軍はズーマを捕獲し、銃殺刑にかけようとする。ところがズーマはさすが魔人なだけはあり、ライフルの銃撃を浴びてもびくともしない。大砲を使ったことで、ようやくズーマは息絶えたのだ。これで全てが一件落着かと思いきや、実はガレラはズーマの子を胎内に宿していた。産まれた子供はガレマと名付けられ、ピラミッドを発見した考古学者の夫婦によって、両親のことは伏せられて大切に育てられた。しかしガレマが母親同様の美しい女性に成長した頃、地中深くに埋まっていたズーマが満を持して復活。無数の蛇を操って軍隊を蹴散らし、再び殺戮を開始しようとするズーマ。そんな中、ガレマは自分の出生の秘密を知り、ズーマと対決することを決意する。全ての始まりの地であるピラミッドを舞台に、フィリピン史上類を見ないであろう壮絶な親子喧嘩が開始された…。
親子二代にわたる壮大なスケールの話なのに、やっていることは他の東南アジア系ホラーと大して変わらないという、そのギャップがたまらないフィリピン映画。ズーマは全身緑色で両肩から大蛇を生やし、身に纏っているのは赤フンドシ一丁という素敵すぎる容姿で、持ち前の怪力を駆使して残虐非道な行いを繰り返す。超能力を駆使して他の蛇たちを従えることもでき、無数の蛇を使って人間を襲わせる場面では、東南アジア映画の常道通りに本物が使われていて見応えがあった。また人々はそんなズーマに対して、被害を免れるために田舎に疎開したり、あれやこれやと退治する方法を考えたりするのだが、その様子は紛れも無く巨大怪獣映画そのものであり、等身大のスケールの怪物を主役にした映画でこういった光景が出てきたのは物凄く新鮮に感じられた。
しかし本作がそんな風に面白かったのも、ズーマが大砲で退治される辺りまで。その後はガレラの出産騒動、ズーマの完全復活、ガレマの覚醒と展開していくのだが、話を広げすぎたせいでどんどんストーリーは収拾のつかない方向へと突き進んでいき、ラストも無理矢理決着をつけた感じになっていたのだ。おかげで見終わった時には作品の余韻に浸るどころか、著しい徒労感に襲われてしょうがなかった。良くも悪くも独特すぎる、東南アジア系ホラーの魅力を十二分に堪能できる怪作だ。
(しかし本作のビデオの冒頭に収録されていた、「バグダッドの盗賊」みたいな雰囲気の謎のアジア映画「ジマター」の予告編が気になってしょうがない)
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