殺人豚 「評価 D」
長閑な田舎町に、リンという女性がやってきた。行く当てのない彼女は、豚を飼育している中年男ザンブリーニの家に身を寄せ、彼が経営しているバーでウエイトレスとして働くことになった。美しい容姿のリンはたちまち町の男たちの人気者になるが、彼女には秘密があった。リンは発作で人を殺してしまう精神病患者であり、強姦しようとしてきた父親を殺したのがきっかけで、州立病院のショック療法センターに収容されていた。しかしそこから脱走し、この町へとやってきたのである。そんなリンはある日、油田で働いている青年ベンを発作で殺害してしまった。その死体を見つけたザンブリーニは彼女のことを気づかい、死体を豚たちに食わせて事件を隠蔽することにした。実は彼の豚たちは、かつて急性アル中で死んだ男を食べたことから人間の味を覚えてしまい、以来ザンブリーニはたびたび警察の遺体安置室から死体を盗み出しては、豚に食べさせていたのである。そんなわけで無事ベンの死体を処分したザンブリーニは、続いて飼い主を探しに来たベンの犬や、リンを連れ戻しに来て返り討ちにあった医者の死体を、次々と豚に食わせていった。そしてザンブリーニはリンに対して逃げるように勧めたが、その時リンは例の発作を起こしてしまった…。
田舎町を襲う悲劇を描いた、不条理な内容のサスペンス映画。「殺人豚」という邦題に反して豚たちは人間を自主的に襲いはせず、ただ与えられた死体を貪るのみ。しかも豚が死体を食べる様子はマトモに写されることがないため、邦題に期待していると確実に痛い目を見るだろう。むしろ本作におけるモンスター的存在は精神病を患っているリンであり、突発的に殺人を繰り返す彼女と、そんな彼女を庇い続けるザンブリーニの奇妙な関係が物語の主軸となっている。ザンブリーニの見かけによらない良い人ぶりと、あまりにも報われないラストが心に残る一篇だった。
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