ロボット・モンスター         「評価 B」
世界には様々な映画があり、様々な駄目映画がある。だがそれら星の数ほどある駄目映画の中でも、とりわけ抜きん出た最低さ加減によってあの「プラン9」と同等の知名度を誇る作品が存在する。53年に製作されたその映画は、基本的なコンセプトこそ単純な侵略SFモノだ。しかし、頼りないモンスター、突飛な脚本、冗漫な演出、やる気の無い演技……etc、思わず制作側の理性を疑わずにはいられない要素に満ち溢れているものだから、映画を観た者は瞬く間に憤怒と混乱の世界に引きずり込まれてしまうのだ。一度見たら脳が爆発すること必至な、駄目映画界の核弾頭。それが本作「ロボット・モンスター」である。
ジョニー少年は、母や姉や妹と一緒に何処かの山の中へピクニックに出かけていた。彼は妹のカロラと侵略者ごっこをしたり、洞窟で発掘調査をしている考古学者とその助手ロイに出会ったりと、楽しい一時を過ごしていた。やがて母親と「父さんが生きていたらよかったのに」などと会話しながら、ジョニーたちは昼寝をすることに。しかし一人だけ先に起きたジョニーが洞窟の付近をうろついていると、眩しい光が目に飛び込んできて、たちまち気を失ってしまった。その間、空では雷が鳴り響き、地上では「紀元前百万年」や「燃える大陸」に出てきた恐竜たちが激しく争っている。そして目を覚ますジョニー。すると洞窟の中から、狂暴そうな怪物が現れたではないか。この怪物、どう見ても潜水ヘルメットを被せただけのゴリラの着ぐるみなのだが、こいつこそが本作の主役であるロボット・モンスター“ローマン星人XK2”だ。XK2は全く同じ格好をした上司の命令によって地球侵略の尖兵として送り込まれ、怪光線によって人類の抹殺を行っていた。そしてジョニーが目覚めた頃には、すでに人類は10人未満しか残っていないという窮地に追い込まれていたのである。ちなみに先ほど出てきた恐竜達とロボット・モンスターとの関連が明かされることは一切ない。慌ててXK2から逃げ出したジョニー少年は、半ば廃墟と化した家に入っていった。そこには母や姉妹の他、先ほど出会った考古学者がいる。だがここで、会話が不可解なことに。ジョニーはローマン星人のことを昔から知っていたような素振りだし、姉のアリスはロイと恋人同士ということになっているし、考古学者がジョニーたちの父親ということになっているのだ。此は如何に、と首を傾げる観客を置き去りにしてストーリーは進行する。彼ら一家は家の周りに電磁バリアを張ることで、怪光線から身を守っていた。更にロイと合流した一行は、光線に耐えられる新薬を開発し、着実に生存への道を歩んでいく。だがそんなことを、ローマン星人が見逃しておくはずも無かった。XK2の上司は地球人の最後の避難場所であった宇宙ステーションを破壊した上に、ロボット・モンスターに対し、生き残った人類を腕力で殲滅するように命じたのである。XK2は不用意に電磁バリアから出てきた家族たちを、一人また一人と殺害していく。ところがそんな中、XK2は何の脈絡も無くアリスへの愛情に目覚めたことから、次第に命令違反を犯すようになり…。
おとなしく電磁バリアの中にいればいいのに、何かにつけて外に飛び出してはローマン星人に殺されていく家族たち。たった一人で人類を全滅させる科学力を持っていながら、移動手段はノタノタ歩くだけのローマン星人。一切の感情や欲望を持たないと言っている割には、事あるごとに感情を剥き出しにしているXK2の上司。そしてストーリーとの関連性が全く説明されないにもかかわらず、終盤になっても登場する「紀元前百万年」や「燃える大陸」の恐竜たち。どれもこれも頭が痛くなるような問題ばかりだが、ストーリーはこれらの事象を丸投げにして理不尽極まりないラストへと突っ走っていくからたまらない。全てがツッコミどころで構成されているような錯覚を覚えてしまう、実に恐ろしい映画だった。
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