パリ・ディストラクション 「評価 C」
清掃業者がストライキを起こしたことで、パリの街はゴミで溢れかえっていた。するとゴミを栄養源としてネズミが大量発生し、人が噛まれたり停電になったりと、ネズミによる被害が続出したのである。しかもネズミの体内にはウイルスが蓄えられていたらしく、噛まれた人が次々と謎の病気にかかり、病院に運び込まれる事態に。女医のローレンスはネズミ駆除業者のアレックスと仲良くなる一方で、懸命に病気の正体を突き止めようとするが、そんな中で同僚のジャックがネズミの群れに襲われて重傷を負ってしまう。病床のジャックは、彼女にとんでもない事実を明かした。かつて彼は研究のため、遺伝子操作して凶暴化したネズミに髄膜炎ウイルスを植えつけていた。だがネズミは気づかぬ間に逃亡して数を増やしたばかりか、ネズミの体内ではウイルスが未知のものへと変質していたのである。新種のウイルスに治療法は無く、途方に暮れるローレンスたち。彼女の娘ローラもウイルスに感染して入院していたが、このまま治療法が見つからなければ彼女の死も時間の問題だ。しかしローレンスはある時、アレックスのペットであるネズミのエルトンが、病原体を持つネズミに噛まれたにもかかわらず、病気に掛からず元気にしている事実に気付いた。エルトンの体内には抗体ができていたのである。早速エルトンの体内からは抗体が抽出された。また政府からは、フェロモンを用いて全てのネズミをプールに集めて爆破する計画が立てられ、これで全ての騒動に収拾がつくかに思われた。ところが他のネズミと一緒にエルトンまでがフェロモンに引き寄せられ、プールへと向かってしまった…。
清掃業者のストライキが原因でネズミが大量発生する点や、ネズミが停電を引き起こす点、ネズミの退治より抗体探しに重きが置かれている点など、様々なところで「ファングス」と似通っているフランス産のネズミ映画。本作のネズミはVFXの質も上々で、鳴き声で大勢の仲間を呼び寄せたりプールの滑り台を降下してきたりと、いちいちツボをついた行動を見せてくれるのが憎いところ。また食い殺された死体もグロテスクで、ネズミ映画の醍醐味は十分に堪能することができた。更にこの映画、おませな性格のローラを始め、人間側の登場人物たちも魅力的に描かれている。彼らの掛け合いは観ていて楽しく、この点において本作は「ファングス」との差別化ができていた。
でもこれだけ惹きつけるモノを備えておきながら、どうして終盤のプールの場面はあんなに出来が悪かったのだろうか。この場面になってCGのレベルはガクっと落ちているし、エルトンから抗体を抽出した後なのでエルトンを救出する意義が弱くなっているのも辛い。そしてプールを取り囲む軍の連中も、プールにローラが入るのを許したり、一般人のアレックスを取り押さえることができなかったりと、尽く無能な行動を見せてくれて作品のテンションを落としてくれた。最も盛り上がるべきところが一番楽しめないという、何とも残念な作品だった。
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