ワイルドサヴェージ        「評価 C」
一匹の虎を運んでいたトラックが、田舎の道で横転した。たちまち虎は森へと逃げ込み、付近の町の住民を次々と餌食にしていく。保安官のグレイディは事態を重く見、州に軍の出動を要請したが、訓練された州兵ですらも神出鬼没な虎には勝てず、犠牲者は増えるばかり。とそんな中、グレイディは元英国軍人のジムと知り合い、彼と共に虎を退治しようとする…。
「サーベルタイガー」と並んで、虎を主役に据えた非常に珍しいタイプのモンスターパニック映画。作品の目玉である虎はほとんど画面に登場せず、主人公達が駆けつけると既に人間が殺されている──というパターンが非常に多く見受けられたものの、バラバラになった腕や足が散らばっている、下顎から綺麗に切断されている、腰から上が無くなっているなど、死体がこれでもかと言う位にグロテスクに描写されていたので、事件の凄惨性は十分に演出されていた。死体の位置からジムが事件の状況を類推していく展開も、実際に事件現場を見せる以上に虎の狡猾さを浮き彫りにしており、虎の出番が少ないながらも、その怪物としての恐怖感は存分に味わうことができたのである。
ただ一方で、ストーリーはまとまりの無さが際立っていた。特に本作ではパニック映画の定番プロットである「町の祭り」が登場するものの、別に「グレイディが祭りの中止を訴えたにもかかわらず市長が決行し、祭りの当日に虎が現れて大惨事」なんて展開にはならなかった。と言うのもグレイディが市長に伺いを立てる前に州兵を呼び、すぐに話の中心が虎退治へと移行してしまうのだ。それで祭りはどうなったかと言うと、特に何の障害も無く終了してしまう。まさしく観客の裏をかくためだけの存在としかなっていなかったのである。
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