冷凍凶獣の惨殺(別題:原始獣レプティリカス)「評価 D」
北極圏のツンドラ地帯にて試掘作業を行っていたスベンドたちは、地底深くに奇妙な肉片を発見する。早速デンマークの海洋生物研究所で調べたところ、それは太古に生存していた爬虫類の肉片で、しかも常温の環境下では徐々に細胞が増殖することが明らかになった。どうやらこの生物は、バラバラの肉片から完全に元の個体へと再生することができるらしい。そこで研究者たちは肉片を水槽に入れて再生を促してみたところ、その目論見は成功し、やがて巨大な怪獣へと変貌を遂げた。ところがその日はひどい嵐で、研究所が停電している間に怪物は脱走。付近の住民を襲い始めたのである…。
「巨大アメーバの惑星」の製作に携わったシドニー・ピンク監督による、非常に珍しいデンマーク製の怪獣映画。本作の怪獣は首長竜のようなフォルムをしており、そのデザインは結構良い感じだ。しかし市街地にて怪獣が動くシーンになると、首の方はワイヤー操演によって存分に動いてくれる一方で胴体はピクリとも動かず、一箇所に留まって首をせわしなく動かしている怪獣の姿は何とも間抜けに感じられた。また映画中盤にはこの怪獣が農家を襲い、家のオヤジを丸呑みにするシーンがあるのだが、そこの合成が粗雑極まりなく、怪獣がオヤジの等身大写真を飲み込んでいるようにしか見えないという壮絶な代物。おまけにこの怪獣には緑色の酸液を吐くという特技が用意されていたが、人々が酸液を浴びる際には画面全体が緑色に染まるだけという実に手抜きな手法が用いられており、全く作品を盛り上げる要素と成り得ていない。挙句に怪獣が山の向こうから出現するカットが二度使い回されている始末で、そんなチープさ満開な特撮には見ている端から笑いが零れてきてしょうがなかった。
そして脚本の方も特撮と同様にお粗末な出来で、新たな災害を生じさせるために行動しているとしか思えない登場人物や、途中からデンマークの観光案内ビデオとしか思えない映像がダラダラ続く展開には、思わずめまいが込み上げてくるほどだ。
だがこれほど常軌を逸した内容であるにもかかわらず、本作ではやたら大量のエキストラが動員されていた。作品後半では無数の人々がコペンハーゲンの大通りを逃げ回るカットが何度も挿入され、特に彼らが跳ね橋に逃げ込んで転落していく場面からは、怪獣との攻防場面なんか到底及ばないほどのスペクタクル感を味わえたのである。特撮の質を見る限りでは明らかに低予算作品なのに、どうしてこんなに大勢の人々を雇うことができたのか。甚だ疑問である。
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