猿人ジョー・ヤング 「評価 S」
アフリカの農園に住む少女ジルは、商人たちから一匹の幼いゴリラを買い取り、ジョーと名付けて大切に育てることにした。それから10年後、興行師のオハラは新しいナイトクラブの目玉となる猛獣たちを捕獲するために、カウボーイのグレッグたちを率いてアフリカへと向かった。ところがそこで、彼らはゾウよりも巨大な一匹のゴリラに遭遇する。そのゴリラこそ、ジルの最大の友達ジョーの成長した姿だった。やがてジルとも知り合ったオハラは、彼女を説得してジョーともどもナイトクラブの見世物に出ないかと説得した。都会に行ったことのないジルは好奇心からそれを承諾し、ジョーと一緒にハリウッドへ渡ることを決意する。その後、巨大ゴリラのショーはナイトクラブの大きな目玉となって連日多くの客が押し寄せるまでになっていたが、一方でジルは日に日に疲弊していくジョーのことが心配で、アフリカに戻りたいと願うようになっていったのだ。そんなある晩のこと、酔っ払った客たちによって大量の酒を飲まされたジョーは、檻を壊してナイトクラブに乱入。猛獣と化したジョーによってクラブは見るも無残な有様となり、その咎でジョーは裁判にかけられ、銃殺されることになってしまった。そこでジルはグレッグやオハラと協力して、ジョーを警察のもとから逃がそうと企むが…。
メリアン・C・クーパー以下、「キング・コング」の制作スタッフが49年に再結集して作った巨大猿映画。ジャングルに住んでいた巨大猿が都会に連れてこられて大暴れするという基本的な流れは「キング・コング」を踏襲しているが、本作では「キング・コング」の冒険映画的な要素は鳴りを潜め、代わりにジョーを巡る人々の奮闘といった、ドラマ的な要素が強く押し出された内容となっていた。それを象徴付けるのがオブライエンとハリーハウゼンの師弟コンビによる特撮であり、ジョーは「コングの復讐」の白コングを一層柔和にしたような感じで、非常に表情豊かに作られている。暴れる時の狂暴な顔、狭い檻の中での元気のない顔、警官隊から逃げる時の得意気な顔と、様々な場面で見せる異なった表情がジョーに人間臭さを与え、それによってドラマ重視の脚本が十二分に活かされていたのだ。
また例え冒険映画的な要素が感じられなくても、カウボーイたちとジョーの戦いから、ジョーと怪力男たちの綱引き、ライオンの群れと取っ組み合いをするジョーと、特撮的な見所は満載で楽しませてくれる。特にクライマックスの燃える孤児院から子供たちを助け出そうとする場面は、移りゆく状況の流れが秀逸で終始スリルを味わい通しだった。「キング・コング」に勝るとも劣らない名作である。
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