マッド・ティース        「評価 B」
ビジネスマンのバートは、それまで順風万帆な人生を送ってきた。ウォール街の大企業に就職し、美しい妻と結婚して子供を得、マンハッタンには家族が十分に暮らしていける広さの豪邸を設けたのである。ところが妻と子供が別荘に出かけた日を境に、彼の人生を妨害する不気味な影が忍び寄ってきた。その影とは、全長30cmはある一匹のネズミ。そいつはバートの家に侵入し、自らが家の主に成り代わらんと、毎日のようにバートに対して密かな攻撃を始めたのだ。怒ったバートはネズミを退治せんとあらゆる手を駆使するが、聡明なネズミはどんな罠も容易に掻い潜り、逆にバートに対して罠を仕掛けてくる始末。おまけにネズミは会社の書類をズタズタに引き裂き、バートの社会的地位まで奪おうとしてきた。執拗なネズミの攻撃に、とうとうノイローゼになってしまうバート。しかしその心の奥には、まだ闘志の炎が燻り続けていた。彼は自分の家を守るため、釘バットで武装してネズミとの対決に乗り出したのだ…。
残忍なネズミと「ロボコップ」ことピーター・ウェラーが住居を巡って死闘を繰り広げる、83年製のネズミスリラー。本作のネズミは猫を殺すほどの巨大な体格を誇るとは言え、まだまだバートに比べては微小な存在。そこで体格の不利を埋めるべく非常に聡明な存在として描かれており、そんなネズミの奮闘ぶりには痛快さすら感じられた。バートが駆除業者を呼んできては代金の小切手をボロボロにしてしまい、業者を追い返してしまう。バートがネズミ捕りを仕掛けると別の場所に持って行き、逆にバートの手を負傷させる。バートが身を守るためにハンモックで寝ていると、天井を食い破って現れる。そしてこのようなネズミの機転によってバートの心は憔悴していくわけだが、惜しいことに本作はここの追い込み方が甘いため、今一つ恐怖感を味わえなかった。ノイローゼになったバートは完全に外界と遮断した生活を送るようになるものの、その後も彼の家にはたびたび来訪者がやってきて、彼に対して救いの言葉を投げかける。その来訪者たちは一切ネズミと絡むことがなく、単に作品の雰囲気をぬるくする以外の作用をもたらしていなかったのである。
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