いけにえ           「評価 D」
大学生のジェイクは、たびたび生じる陰惨な幻覚に悩まされていた。彼はある日、友人のコンラッドからパスウェイという危険なサイトを紹介される。何でもそこに個人情報を登録すると電話が掛かってきて、電話に出ると犯罪を示唆するような悪魔のささやきが聞こえるらしい。ジェイクは馬鹿らしいと思いながらも無理矢理サイトに登録され、電話の声に付き合わされることになった。するとその日から、彼の幻覚は一段と深刻なものに変わったのである。惨劇が発生する様子がはっきりと目の前に生じるばかりでなく、ちょうどその直後にパスウェイの参加者たちが、ジェイクの幻覚と似たシチュエーションで殺人を犯した後に自殺していったのだ。もしや自分は禍々しい力に憑りつかれているのではと考えたジェイクは、悪魔崇拝者たちに接近し、この現象の正体を確かめようとした。そして遂にパスウェイの開発者と接触したとき、彼は驚くべき事実を知らされたのである…。
妄想狂な大学生の身に起こる悲劇を綴ったオカルト・ホラー。作品の序盤においては、現実を予知したかのような幻覚、参加者の私生活を見透かしているパスウェイの声、パスウェイ参加者の前に現れる悪魔、と次々に不可解な要素が現れてストーリーへの求心性を高めてくれるが、ジェイクが真相を突き止めようと行動を起こした辺りから、物語は凄まじき勢いで飛躍を始めた。ジェイクは事件の核心に悪魔が関わっているのではと疑うが、その根拠が「悪魔と対峙する幻覚を見たから」では流石に無理がある。危険であると煽られてきた悪魔崇拝者たちとの接触は、あまりにスムーズに事が運びすぎて拍子抜けさせられる。しかも作品後半で明かされる諸々の真相はろくに伏線を張られていないものばかりで、納得するどころか尚更首を傾げてしまう。特に事件の黒幕はジェイクの正体をいち早く見抜いていたそうだが、だったらどうしてジェイクのことを終盤まで放置していたのかと疑問に思えてしまう。これらの唐突すぎる展開はもしかすると幻覚と現実の区別を曖昧にする効果を狙ったのかもしれないが、その割にはラストのオチが投げやり感の漂うもので、あまり効果を発揮しているようには感じられなかった。ただ舌の切り落としとか頭の串刺しとか、グロテスクな場面は全編にわたって万遍なく散りばめられているので、ゴア描写が好きな人ならば少しは楽しめることだろう。
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