荒野のドラゴン         「評価 B」
19世紀末、アジアでカンフーとヨガを学んだ青年“上海ジョー”が、カウボーイになるためにテキサスの田舎町にやってきた。ところが町を牛耳る農場主スペンサーと対立したことから、ジョーは彼が雇った殺し屋軍団に命を狙われる羽目になってしまう。次々とやって来る殺し屋を、自慢のカンフーで辛くも退けていくジョー。やがて業を煮やしたスペンサーはジョーの同門にいた暗殺者ミクリヤを雇い、ジョーの抹殺に向かわせてきた…。
70年代前半のカンフーブームの頃に制作されたマカロニ映画。カンフー使いが西部劇の世界で大暴れするというコンセプトは「燃えよカンフー」っぽいが、本作は流石マカロニと言うべきか、アクションシーンが壮絶極まりない内容で見る者に強烈なインパクトを与えてくれた。まず何と言っても、主人公の見せるカンフー技が凄い。バク宙で馬に跨ったり、地面からの跳躍で屋根の上に乗ったりといった、常人には到底不可能なアクションをカット割やワイヤーを駆使することで表現しているのだ。カットの繋げ方がどうにも不自然で、観ていて失笑確実なのも御愛嬌だろう。また襲い掛かってくる殺し屋軍団が個性派揃いなのも楽しいところ。人食い巨漢を始め、落とし穴を仕掛ける奴(もちろん最後は自分の穴に落ちて自滅する)やら、人の頭の皮を生きたまま剥ぐのが趣味の男やら、強い印象を残す人物ばかり。そして彼らの頂点に君臨するのが、クライマックスに登場するミクリヤだ。着物姿に刀を背負い、そして頭にはマゲを結っているという、どう見てもカンフーを習ったとは思えない出で立ちだけでも十分爆笑モノだが、それに加えてこいつも前述の奇怪なアクションを使ってくれるのだからたまらない。更に殺し屋軍団との戦闘は、胴体串刺し、目玉くりぬき、手首切断と、「キング・ボクサー大逆転」か「情無用のジャンゴ」かと言わんばかりの残虐描写がてんこ盛り。そのサービス精神の旺盛ぶりは、ストーリーの消化不良な点なんか実に些細な欠点であるかのように思えてしまうほどだった。
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