フィア・ストーム 「評価 D」
町を歩くにも常に不安が付きまとい、人とまともに会話することすらままならない──。そんな不安症の方々に朗報が訪れた。グローバル保障が研究していた安全ブレスレットは、装着者に危険が迫ると即座にアラームで知らせてくれるばかりでなく、必要な場合には警察まで呼んでくれるという優れモノ。その試作品がとうとう完成し、人々の心から不安が取り除かれるのも時間の問題となったのだ。ところが不安症の青年ローリーが試作品を装着してからというもの、彼の周りでは機械の誤作動による事故が頻発するようになった。実はブレスレットには重大なバグがあり、持ち主の不安に呼応して機械に誤作動を起こさせていたのである。おまけに事故に巻き込まれた人々が次々とローリーと似たような症状にかかり、街中が不安症の人々でごった返すようになってしまった…。
日本では何故かパニック映画としてリリースされた本作だが、実際は不条理系のコメディ映画といった方が正確だろう。事故に遭ったオッサンにストーキングされるとか、トイレの清掃員に注意されるとか、独自のファッションを貫く女性と中身の無い会話をするとか、定型のシチュエーションが何度も何度も繰り返され、その中でローリーが徐々に自らの恐怖を克服していく様子が描かれている。時折出てくるシュールなニュース映像など、少しは笑える箇所もあるが、極度に不安症なローリーを始め、登場人物の誰一人にも共感できないのが難点だった。おかげで彼らのやり取りが完全に余所の世界のものとなっていて、観ているこちら側は終始置いてけぼりの感覚を味わわされる。そんな状態で映画を観続けることは苦行以外の何物でもなく、ギャグの良さが完全に帳消しとなっていたのだ。
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