オルカ             「評価 B」
カナダ東岸の海で海洋生物の捕獲を行っていたノーランたちは、誤って一匹の雌のシャチを死なせてしまった。そのシャチを引き上げてみると腹から胎児が零れ落ち、ノーランたちはショックを受ける。彼らは取り敢えず港に引き返すことにしたものの、すぐ近くの水面では妻子を殺された雄のシャチが、ノーランの船に怒りのまなざしを向けていたのである。そしてその日から、シャチによるノーランへの復讐劇が始まった。漁港の船を次々と沈め、コンビナートを燃やし、挙句にノーランたちの家を破壊して仲間を食い殺したのだ。自分のせいでこんな事態を招いたことからノーランは漁港内での肩身が狭くなり、やがて海洋学者のレイチェルらと共に、シャチとの決着をつけるために雌のシャチを殺した場所へと出航した…。
70年代後半の動物パニックブームの最中、ディノ・デ・ラウレンティスが世に送り出したスパック・ロマン。“オルカ”とはすなわちシャチのことであり、クジラをも簡単に食い殺す獰猛性と高い知性とを兼ね備えた、海中最強の生物として名高い。本作のシャチも開始早々にサメの胴体を食い千切る他、強烈な体当たりで船の底に穴を開けるなど、猛々しさの演出はしっかりなされていた。だが本作はそういったシャチの猛獣的側面よりも、むしろ聡明さの方が重視されて描かれていたのだ。この映画のシャチは通常では考えられない位に知性が高くなっていて、敢えてノーランの船だけを襲わないでノーランの肩身を狭くしたり、石油パイプを破壊して漁港やコンビナートを火の海にしてしまったりと、非常に狡猾なやり口でノーランへの復讐を行っていく。これだけのことを野生のシャチがやってのけるなんてどう考えても有り得ない話だが、シャチの聡明さが映画前半で何度も何度も繰り返し説明され、また妻子を目の前で殺されてたシャチの慟哭する様子が悲壮感たっぷりの演出で綴られるものだから、復讐の場面では嘘臭さよりもカタルシスが先行して感じられたのである。ただ人間側のドラマの掘り下げが甘く、クライマックスの「妻子を殺された男同士の決闘」というシチュエーションがいまいち活きてこなかったのは残念だった。
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