姿なき訪問者 「評価 C」
アメリカの空を動き回っていた未確認飛行物体が、カリフォルニア上空で消失した。すると消失地点付近では、油田の炎上を始め、妨害電波の発生、住民二人の殺害といった様々な事件が起こる。殺人事件の目撃者の証言によれば、犯人は宇宙服のようなものを身に纏った大男で、しかもヘルメットの下には頭が無かったらしい。そこで事件を追っていたバウアーズ警部補と電波通信局のヘイズンは、これらの事件が姿の見えない異星人によるものと考え、天文学者のワイアット博士やアメリカ空軍と協力して異星人の捜索を開始した。だが当の異星人は特殊なガスを吸い続けないと生きていけない体質で、今にも息絶えようとしていたのだ…。
ビリー・ワイルダーの実の兄、W・リー・ワイルダーによるSF映画。本作の異星人は透明化という能力を持っているが、冒頭で殺人事件を起こして油田を燃やした以降はこれといった悪事もおかさず、ただ主人公たちから逃げ回るばかりで物凄くひ弱な印象を受ける。またこの映画では異星人がろくに意思表示せず、侵略者なのか偶然地球に落ちてきただけなのかは最後まで明らかにされない。しかし主人公たちはこれを後者と見なしており、油田炎上についても「ガスが欲しくて燃やしたに違いない」と解釈がなされ、露骨なまでに異星人に同情的。そのため本作は同時期に量産されていた侵略者SFモノは勿論のこと、異星人の真意をぼかしつつも中立性を保っていた「遊星よりの物体X」ともまた、異なった味わいを醸し出していたのである。
だがそういったアプローチの斬新さは評価できる一方、作品自体の出来がそれほど良くないのが致命的だった。ドキュメンタリー調で展開する前半と完全な劇映画と化す後半とが上手く噛み合っておらず、終盤では建物内を移動する様子がやたらと長く流れるために随分と間延びした感じが漂っていたのだ。
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