鳥 「評価 D」
出産を間近に控えた獣医アレックスと夫のマークは、広大な畑が広がるドイツの田舎町へと引っ越してきた。ところがその町では狂暴なカラスの群れに家畜が襲われるという事件が続発しており、アレックスはもし産まれてくる子供がカラスに襲われたらと気が気でなかった。そこで独自にカラスたちが暴れた原因を探ってみたところ、知能を高める活性物質の開発計画に行き当たった。その研究の際、実験体として使われていた40匹のカラスが逃げ出したのである。活性物質の作用で高い知能と強い残忍性を得たカラスたちは、野生のカラスたちを従えて数千羽の大軍団を形成。やがて家畜たちばかりでなく、人間にも害を及ぼし始めた…。
ヒッチコックの「鳥」と同じ邦題の、ドイツ製のバードパニック映画。内容的にはヒッチコックの「鳥」とはまるで関係が無いが、事あるごとに響き渡るカラスの鳴き声や、びっしりと並んだカラスたちのイメージで不安を煽る演出には明らかに「鳥」からの影響が窺えた。さて、本作に登場するカラスたちは知能が高く、数羽の鳴き声で人々の気を逸らしてその間に食料を盗む、物陰に潜んで人間を襲う──といった頭脳プレイを見せてくれる。特に鉄カゴの中からカラスが脱出するシーンは、そのあまりもの狡猾ぶりに感心せずにはいられなかった。しかし知能の高さを示す演出は十分だった一方、肝心のカラスたちが人や家畜を襲う描写が決定的に不足していた。人間も家畜も襲われた後の死体が映るばかりで、カラスに襲われる画が全くと言っていいほど出てこないのだ。精神的な不安に重点を置いたために直接的な描写を省いたのかもしれないが、それにしては人間側のドラマが煩雑で、あまり不安な感じが湧いてこないのが困りモノ。サスペンスとしてもパニックとしても中途半端な印象の作品だった。
TOP PAGE