魔鬼雨             「評価 C」
300年前、レッドストーン砂漠で邪教を広めていた男コービスは、信者からの裏切りに遭って命を落とした。ところが悪魔に魂を売っていた彼がそう易々と死ぬこともなく、現在になって再び活動を開始したのだ。一方その頃、彼を裏切った者の子孫であるプレストン家の人々は、つつましくも平和な生活を送っていた。しかしコービス率いる邪教の集団が彼らに襲い掛かり、当主スティーブは身体をドロドロに溶かされて殺害され、夫人と次男のマークは呪いにより邪教の徒へと変えられてしまったのである。家族の中で唯一生き残った長男トムは、妻ジュリーや友人リチャーズと共に一家失踪の原因を探っていたところ、実家に隠されていた古い書物に行き当たった。その本にはプレストン家とコービスとの300年の因縁が綴られており、また「魔鬼雨」という謎の単語も記されていた。トムたちは「魔鬼雨」の意味が分からないまま、事件の核心にいるコービスと戦う決意を固めるが…。
「深海征服」「メテオ」のサンディ・ハワード製作総指揮によるオカルトホラー。映画はマーク視点でしばらく事件の謎を追ってからトム視点に移り変わって謎解きを引き継ぐという二段の構造をとっているが、肝心の謎が割とアッサリ解決してしまうため、この構成がさして功を奏しているとは思えなかった。ジュリーの超能力も伏線を散りばめる以上の効果を発揮しておらず、如何にも取って付けた感が漂っていたのが侘しい。
ただこの映画、「猿の惑星」のトム・バーマンによる特殊メイクは見事な出来だった。邪教に取り込まれた人々の双眼の無い顔は一見して作り物だと分かる代物だったが、それが逆に仮面を被っているような無機質な印象を与え、生々しい造形を象るよりも一層おどろおどろしい雰囲気を醸し出していた。そしてもう一つ、人間がドロドロに溶けていく場面での特殊メイクも忘れてはならない。顔や指先が見る見るうちに溶解していき、頭の中からは青い液体を流れ出し、やがて萎んだ風船のような風貌になって消滅する。この一連の過程におけるメイクは邪教徒たちの顔とは対照的にリアル志向で、冒頭のスティーブ消滅シーンはもとより、魔鬼雨を浴びた何十人もの邪教徒たちがドロドロに溶けていく様子を10分近くにわたって延々と流し続けるクライマックスに至っては、その悪夢のような光景に息を呑んでしまうほどだった。
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