アイスクリームマン 「評価 C」
グレゴリーは大好きだったアイスクリーム屋さんが目の前で惨殺されてからというもの、血とアイスクリームに極端なまでに執着するようになった。大人になって移動アイスクリーム屋を始めてからも彼の狂気は収まらず、近隣の住民たちを殺しては、その肉や臓器を隠し味にしてアイスクリームを作っていたのである。だがある晩、町の子供を捕まえているところをクリス少年に目撃されてしまった。町の悪ガキ仲間と協力し、グレゴリーの悪事を暴こうとしてくるクリス。対するグレゴリーは、あの手この手を使って彼らの口封じをしようとするが…。
人肉アイスクリームを作る狂人と子供たちとの戦いを描くホラー・コメディ。人肉アイスはカニバリズム映画のお約束どおりに街中で大評判となるわけだが、まだ肉の形を留めている人肉饅頭や人肉パイとは違って、ドロドロのアイスクリームを食べている場面を示されても観ている側としてはあまりピンとこない。そこで本作では、チョコアイスに眼球をトッピングしたり、人間の生首をコーンに乗せた巨大アイスを作成したりといったストレートな描写を盛り込むことによって、アイスに人肉が使われていることを強く印象付けようとしていたのだ。このアプローチは眼球が口の中で転がされる様子をじっくり映すといった厭らしい演出によって、それなりに気色悪さを醸し出すことに成功していた。ところが肉体の一部を明確な形で盛り込んだことで、かえってクリームそのものに人肉が入っているという実感を薄くしてしまっていたのである。やはり人肉は最低限形を保っているからこそ、食べる場面におぞましさが出てくるというものだろう。
そんなわけで本作、カニバリズム映画としてはいまいちな感じだったが、一方で殺人鬼グレゴリーのクレイジーな所業の数々は見物だ。自分のこめかみに巨大な注射器が刺さっては歓喜に震え、恩人の飼い犬を何の躊躇いも無くミンチにし、ワッフルを焼く器具で他人の顔面をコンガリ焼き、生首を両手に持っては人形劇を繰り広げる。クリント・ハワードの卓越した演技もあって、素晴らしいまでの狂人キャラとなっていたのである。またアイスの入ったバケツにゴキブリたちが蠢いていたり、人肉にネズミたちが群がっていたりと、虫や小動物を使ったゲロゲロな演出も小気味よく、食人描写の不足を補っている。精神病院のくだりで話が必要以上に脱線していたのと、ラストの決着における演出が弱かったのは気になったが、グロテスクな嗜好の持ち主ならばそこそこ満足のいく作品だ。
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