ゾンビーズ 生ける屍の群れ 「評価 C」
町の一角にある、無数のゾンビがひしめく映画館。そこでは連日連夜ゾンビ映画の上映が行われていた──という導入のこの作品は、平たく言えばゾンビ映画のハイライトシーン集である。全部で七本のゾンビ映画の見せ場を繋ぎ合わせたような構成で、それらの作品は「サンゲリア」を除けば全て日本劇場未公開(そして私も「サンゲリア」以外は未見)。中にはかなりのお宝作品の映像も収録されており、B級映画好きとしてはそこそこ楽しめる内容だった。
まず紹介されるのはルチオ・フルチの名作「サンゲリア」。冒頭のゾンビ登場シーンから、鮫とゾンビの格闘、眼球突き刺し、蛆虫ゾンビの復活、クライマックスの攻防、そして衝撃のラストシーンと、主な見所は全て収録されている。ショックシーン以外にもブードゥーについての説明場面が盛り込まれたりと、後々に紹介される作品と違って、ストーリーを最低限理解できるようにとの配慮がなされていた。
次に登場するのが、フランス・スペイン合作の「ナチスゾンビ 吸血機甲師団」。湖に沈んでいたドイツ軍人たちがゾンビとして蘇り、近くの田舎町に住んでいる人々を襲う──という内容なのだが、ゾンビの襲撃場面なんかそっちのけで美女のヌードシーンばかりが挿入される。全裸の美女が湖で泳ぐシーンが延々と続いたかと思えば、キャンプに来た女性達が脱衣するカット、庭先で行水する美女のカットなんかがこれでもかと盛り込まれ、ゾンビよりも美女のヌードの方が記憶に残るという非常に困った構成になっていたのだ。
お次はドイツ軍繋がりで、ジェス・フランコ監督による「ゾンビの秘宝」。砂漠のオアシスでドイツ軍のゾンビが人々を襲う──なんて内容で、如何にもジェス・フランコらしく美女の裸は出てくるものの、直前に裸祭り状態の「ナチスゾンビ」を見せられたのでインパクトが弱く感じられた。また砂漠をノタノタ歩くゾンビたちは今一つ印象が薄く、むしろ冒頭に流れる銃撃戦の方が印象に残る作品だった。
次に出てくるのが、オーストラリア映画の「鮮血と絶叫のメロディ 引き裂かれた夜」。洋館を舞台にしたオカルト映画っぽいが、衝撃シーンを収録するのに手一杯だったみたいで、この映画を観る限りではどんなストーリーなのか全く理解できなかった。首切断や頭カチ割りといったゴアシーンは充実していたが、巨大な蜘蛛の巣のセットの他、ローブを纏った死霊、血の涙を流す骸骨など、セットやマスクの造形がことごとく安っぽい出来なのが興醒めだった。
五本目は「地獄墓地・死霊のうめき」。男女が墓荒らしをしたために洋館が透明ゴリラに襲われる──というストーリーらしいが、なんでゴリラが透明になっているのかは本作を観るだけでは分からない。粉を浴びせて透明ゴリラの正体を暴く、なんて透明怪人モノのお約束もあり、個人的には割と気になる内容だった。
それが終わると、またジェス・フランコ作品の登場だ。「悪夢の死霊軍団 バージン・ゾンビ」である。しかし本作ではこの映画の紹介に全く時間を割かれておらず、本作に収録されているのは、洋館で美女がゾンビの群れから逃げ回った挙句に捕まるシーンと、黒い衣服を纏った女性が松明を持って歩いているカットだけ。「鮮血と絶叫のメロディ 引き裂かれた夜」と同様、本作を観るだけではどんな映画なのか全く分からなかった。
そしてトリを飾るのが、日本未公開ながらもZ級映画として一部で有名な「アストロ・ゾンビーズ」だ。死体のパーツを集めて作られた人造人間アストロゾンビが、ファンファンファン…とサイレンを鳴らしながら美女を襲うという内容で、研究室で大鉈を持って暴れ回るその御姿を拝めたとなっては、この映画を未見のB級映画好きとしては感涙せずにはいられなかった。
本作ではこれらの映画のハイライトの他、独自に撮影したゾンビと美女のイメージ映像のようなものも幾つか収録されているが、正直あまり出来は良くなく、煩わしいだけの存在だった。お目当てのゾンビ映画の紹介部分を観ようにも、これらの部分に忍耐を強いられることとなるだろう。
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