サンタが殺しにやってくる 「評価 C」
幼い頃にサンタと母親の情事を目撃して以来、ハリーはサンタクロースに異常なまでに傾倒するようになった。家ではサンタクロースの格好に扮し、サンタに関する新聞記事を集め、テレビのパレードにサンタが出ると、弟たちとの約束も放ったらかしにしてテレビに齧りつく。そしてまた、サンタ同様に善良な子供を愛していたハリーは、子供たちに夢を与えようとオモチャ工場に就職した。だが現実は厳しく、彼は金儲けのことしか頭にない同僚や上司たちにウンザリする日々を過ごすこととなったのだ。そしてクリスマスイブの日、他の大人たちに失望したハリーは、「こうなったら自分がサンタになってやる!」と自らサンタの格好に扮し、バンに乗って町の子供たちにオモチャを配り始めた。しかし同時に、サンタを馬鹿にする大人や会社の同僚を見つけては、彼らを皆殺しにしていったのである…。
サンタを偏愛する青年が惨劇を起こすサイコホラー。幼い頃のサンタにまつわる悪い経験が基で殺人鬼に変貌する──という基本設定は後年のサンタ映画「悪魔のサンタクロース 惨殺の斧」と一緒だが、「悪魔の〜」のビリーは経験上のサンタと同じ行動を取ることで殺人鬼となっているのに対し、本作のハリーは逆に経験上のサンタを否定することから殺人鬼に変わっているのが好対照で面白い。出会ったサンタがとんでもないロクデナシだったことから現実のサンタに幻滅し、自分で理想のサンタになろうとした結果、子供の心を持たない大人たちに対して凶行に走ったのである。だからハリーは基本的に子供の味方であり、ビリーと違って悪ガキの首を斧で刎ねたりなんかせず、せいぜい驚かせたりプレゼントをケチったりする程度。実にサンタらしさを体現したようなキャラクターではないか。町の大人たちが松明を持ってハリーを追い回す描写、子供たちがハリーを大人から庇う場面を置くことで、一層「子供の味方」としてのハリーの印象を深くしていたのもポイントが高かった。
しかしこの映画ではサンタになろうとする彼の姿を、子供の心を持った大人として捉えている一方で、完全な変質者としても捉えているのは気になった。作中の至るところでハリーは意味不明な台詞を吐いてその異常性が強調されるのだが、そのおかげでハリーが本当の幸せを掴むラストカットが今一つ煮え切らない感じになっていたのだ。
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