ゾンビ・ドッグ        「評価 D」
脚本家ミラードはスランプのどん底にいた。いつまで経っても新しい作品のアイデアが湧いてこず、くだらない妄想に耽りながら酒浸りの毎日を過ごすばかり。だがそんなある日、彼のもとに思わぬ救世主が現れた。うっかり轢き殺してしまったラッキーという犬がゾンビとして蘇り、テレパシー能力を使って彼に脚本のアイデアを与えてくれたのである。ラッキーのアイデアは奇想天外なものばかりで、ミラードは瞬く間に脚本家として成功を収めるようになった。しかしその成功は全てラッキーのおかげなので、ミラードは素直に悦に入ることができずにいた。更にラッキーはミラードを奴隷のように虐げ、彼の心から人間としての尊厳を奪っていったのだ。そんな生活に耐えられなくなったミラードは、やがてある決断を下す…。
変態脚本家と超能力犬との奇妙な日常を綴った、ホラーともサスペンスともコメディとも形容しがたい作品だ。映画は基本的にミラードの独白によって展開し、彼の視点を通して、ラッキーの狡猾で貪欲で残忍な姿が徐々に浮き彫りにされていく。しかしこのミラードもかなりの鬼畜変態野郎で、随所でサディスティックな妄想に耽るかと思えば、途中で屍姦趣味に目覚めて少女の死体と情交を繰り返し、終いにはラッキーに対するストレスから殺人狂へと変貌する始末。にもかかわらず本作は後半のラッキーに虐げられる顛末が急ぎ足になっているものだから、豹変していくミラードの心に付いていくことができず、次第に彼の視点で作品を追うことが苦痛となってしまった。可愛い外見でいながら渋いオヤジ声で語りかけるラッキーのキャラはツボに嵌まったものの、ミラードが単なるゲス野郎にしか見えなかったのは残念だった。
TOP PAGE