悪魔のサンタクロース 惨殺の斧  「評価 B」
1971年のクリスマス・イブ。少年ビリーは両親や弟のリッキーと一緒に、精神病院に収容されている祖父の見舞いに行った。だがそこで祖父から「悪いことをした人はサンタに懲らしめられるんだ」と脅されたビリーは、サンタに対して人知れず恐怖感を抱くように。しかもその帰り道、車を運転していた両親が祖父の悪口を言ったところ、突然サンタの格好をした強盗が現れて両親を惨殺したんだから堪らない。これによってビリーの頭には『サンタ=悪人を殺す存在』という等式が組み込まれてしまい、彼は孤児院に送られてからもサンタに怯え続ける日々を過ごすのだった。しかし孤児院はキリスト教会が運営しており、当然サンタクロースは親しむべきものとして見られている。そのためサンタを恐れるビリーは問題児扱いされ、院長から毎日のように厳しい体罰を受ける羽目になったのだ。それから数年後、逞しい青年に育ったビリーは、施設を出て街のオモチャ屋で働くことになった。ところがサンタに対する恐怖心は、未だ消えることなく燻り続けていた。クリスマスの日、サンタの衣装を着せられたビリーは人格が豹変し、悪い奴らを皆殺しにする猟奇殺人鬼となったのである…。
サンタが人を殺し、シスターが少年を虐待する内容なだけに、キリスト教圏の本国アメリカでは上映中止運動が巻き起こったスプラッターホラー。私は既に本作のダイジェストが冒頭で流れる「悪魔のサンタクロース2」の方を見ていたため、殆どの見せ場やストーリーが頭の中に入っている状態での観賞となったものの、それでも本作は最後まで十分に楽しむことができた。と言うのもこの映画、ダイジェスト版では分からなかったが心理描写の積み重ねが物凄く丁寧なのである。ボケた祖父の妄言が運悪く実現してしまったためのトラウマの形成、院長からの強い思想強制による恐怖心の潜在化、バイト先での人間関係の軋轢によるストレス──など、「2」のダイジェストでは省かれていた箇所がビリーが狂気に走るまでの重要な要素として作用しており、彼が爆発したときに生じるカタルシスは当然と言えば当然だがダイジェスト版の比ではなかった。それにダイジェストでは簡単に流されていたビリーの最後の台詞も、それまでの過程がしっかり綴られていた本作では何と粋に聴こえることか。細かいストーリーや作中のどんでん返しを既に知っていても面白い、殺人鬼ホラーの佳作だった。
(ちなみに本シリーズ、「悪魔のサンタクロース2」以降は「ヘルブレイン 血塗られた頭脳」「新 死霊のしたたり」「キラーホビー オモチャが殺しにやって来る」と続く)
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