溶解人間 「評価 C」
宇宙飛行士のウエストは土星付近を航行中、太陽から発せられた謎の放射線を浴びてしまった。それによって彼の体は異変を来たし、地球に帰還した頃には、全身がグズグズに崩れた溶解人間となっていたのである。おまけに放射線による作用で殺戮衝動にまで駆られるようになったウエストは、看護婦を惨殺して施設を脱走。上司や友人の必死の追跡も振り払って、近隣の住民を恐怖のどん底に陥れるのだった…。
分かり易すぎる設定にストレートな筋書きと、77年製作でありながら50年代の匂いをモロに感じさせてくれるサイエンスホラー映画。溶解人間はただ林の中をウロウロして人を襲うだけの単純なモンスターだが、リック・ベイカーによる造形は秀逸だった。溶けた肉を垂らした全身は赤黒く、その顔は眼が窪み、唇が溶けたために歯茎が剥き出しになっている。しかも絶えず体表に粘液を湛え、少し動くだけでそれがポタポタとしたたり落ちてくるのだ。誠に酸鼻たる容姿で、作品の顔として十分すぎるほどの魅力を振りまいていた。
しかしストーリーは溶解人間が人を襲うシークエンスを延々と繰り返すだけなので単調極まりなく、溶解人間の頭の中で宇宙航行時の様子が何度もフラッシュバックされるのも単なる尺稼ぎにしか見えず決まりが悪い。人知れず事件が解決してしまうラストはある意味斬新だったが、溶解人間の造形以外は特に惹かれるところのなかった作品である。
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