ミミズ・バーガー 「評価 S」
中年男性アムガーは、父の遺産として湖周辺の広大な土地を所有している大地主だった。しかしそんな彼から土地を取り上げんと、市長や政治家や詐欺師連中がこぞって悪だくみを働かせていたのだ。おまけにクレームのうるさいキャンプ客やスター気取りの女性ハイディなんかも彼の家に押し寄せるようになり、アムガーの生活はたちまち騒がしいものへと変貌したのである。彼は飼育しているミミズたちと一緒に、穏やかな日々を過ごしたいだけなのに。ストレスを溜めるアムガーだったが、その時事件は起こった。飼育箱から逃げ出したミミズが何匹か、ハイディの食べているスパゲッティの皿に紛れ込んだのである。そうとは気づかずにミミズ入りスパゲッティを啜り、ミミズと麺をムシャムシャ咀嚼するハイディ。するとどうしたことか、彼女の体は見る見るうちに変質し、下半身ミミズの化け物になってしまったのだ。更にミミズたちはキャンプ客の食事にも紛れ込み、彼らもまたミミズの怪物へと変わってしまった。驚き対応に追われるアムガーだったが、ふとニュースで市長達がアムガーの土地を取り上げるために強硬策に出ることを決めたと知り、彼らにミミズを食べさせることを思いついた…。
ミミズの踊り食いカットをこれでもかと言う位に盛り込んだ、際物映画の最右翼にしてミミビデオの代表作。楽しげな歌と擬人化したミミズたちの絵によるオープニングは如何にも子供向けっぽいムードで心が浮き立つが、その直後のバースデーケーキの中に大量のミミズが蠢いているカットで早くも観客の心は奈落の底へと突き落とされてしまう。
それからしばらくの間は刺激的な描写もなく退屈させられるが(正直言ってこの映画、ショックシーン以外はあまり面白くない)、ハイディやキャンプ客のミミズ踊り食いカットに至って、本作は第二の山場へと達する。みんな口を開けてクチャクチャ咀嚼し、しかもそれをロングショットで捉えているものだから、我々観客はミミズの体が他の食べ物と混ざってミンチ状になっていくまでの一部始終をハッキリと拝むことができるのである。もうその気色悪さと言ったら、「スラッグス」のアンチョビサラダの比では無かった。ミミズを食べた人々が下半身ミミズに変身するカットで少々和んだ心持ちにさせられるものの、それでも後味の悪さを払拭することはできなかった。
そして再度ダラダラと退屈な場面が続いた後、いよいよ映画はクライマックスに突入する。アムガーが土地を狙う町の住民に対し、ミミズを喰わせてミミズ人間に変えるという無差別テロを仕掛けるのだ。今までの場面ではスパゲッティやホットドッグに紛れ込んでいたミミズさんたち、今度は邦題どおりのハンバーガーやソフトクリーム、酒のボトルなどに入っての御活躍。勿論一回食われるごとにミミズを咀嚼するカットが長回しで挿入されるわけで、ワンパターンと言えばワンパターンなのだが、シチュエーションがシチュエーションなだけにおぞましさが倦怠感を打ち破り、ラストまで気持ち悪い感覚を持続して味わうことができた。
食べ物にミミズが紛れ込み、それを食べる。本作はただその二点だけを徹底して描くことで、あまりにも壊滅的な世界を作り上げていたのである。
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