地底帝国の謎           「評価 D」
乳母の仕事をしていたクリスチナは、ひょんなことからハワイで犬の面倒を見ることになった。だが雇い主から犬を預かったところで車にぶつけられ、腹を立てた彼女は犬を連れたままタクシーに乗り、車を追いかけることにした。やがて車は火山地帯で止まり、タクシーを降りたクリスチナは車を運転していたブライアンたちに文句を言った。しかし彼らはまるで謝罪の意思を示さず、彼女を軽くあしらって火山の洞窟探検へと出かけていった。呆れたクリスチナは犬を連れたまま、それを追う。そして彼ら全員が洞窟の奥へと入ったとき、突如火山が激しい震動をあげて爆発したのである。クリスチナたちは地底の奥深くへと転落し、何とか地上に出ようと道を探したものの、なかなか地上の光は見えない。果てには流砂に飲み込まれ、彼女らは地球の中心部にあるという国・アトランティスへと辿り着いてしまったのだ。そこでは徹底した管理社会が築かれており、民衆は政府の方針に異を唱えることすらできないでいた。クリスチナはそんな彼らに地上の素晴らしさを教え込むが…。
ジュール・ヴェルヌの「地底旅行」の三度目の映画化作品──のはずだが、「地底を探検する」「サクヌッセムという人物が地底世界への道標役を果たす」「地球の中心部へ行く」の三点を除けば、まるで原作の面影を残してはいない。舞台は現代だし、地底への入り口は火山繋がりということでハワイに変わっているし、地底は「1984年」モドキの全体主義社会になっているのだ。
だがそれだけなら、まだいい。この映画が問題なのは、舞台を現代に移したことで「地球の中心に別世界なんかあるわけない」といった雰囲気になり、制作側もそれを気にしてか作品全体を不条理SFじみた内容へと改変してしまったことである。地底世界へ行くまでの過程も結構冗長だったが、地底に着いてからの展開といったらもう支離滅裂の極み。場面間の繋がりが不自然な箇所がかなりあるし、登場人物たちの行動も理解しがたい。挙句に想像を絶する意味不明なラストを迎えるとあっては、最早開いた口が塞がらなかった。しかもエンディング前にはそれまでの場面をツギハギしたようなカット群が3分ぐらい流れるという要らないサービスつきで、観る者の頭を一層の混沌に導く。あまりにも酷い出来の作品だった。
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